
祐成 保志
2026年09月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2026年09月01日 |
祐成 保志 |
住まい・生活 |
住環境 |
情報誌CEL (Vol.139) |
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住宅というハコさえあれば安心という時代は終わった。
超高齢化と単身化、親族ネットワークの弱体化、雇用の不安定化などを背景に、
「住む」という行為は今、社会保障や福祉の課題として捉え直されつつある。
住まい・暮らしをめぐり、日本でどのような構造変化が起きているのか。
社会学者として長年「ハウジング」研究に携わってきた祐成保志氏から刺激的な講義をしていただいた。
衣食住のなかで「住む」だけが自動詞であり、両義的な性質をもっています。たとえば人は住まいにおいて、かなりの時間を眠ってすごしますが、睡眠はもっとも受動的な行為と言えます。休息のために敢えて思考や活動を止めていることも多く、オフィス・職場とは異なり、住まいは主体的な振る舞いや判断、責任から解放される場所でもあります。
もっとも、帰って寝るだけの場所が住まいかと言えば、それでは不十分です。住まいは人が何かをつくるという、能動的な行為がなされる場所でもあります。食事をつくる、暮らしに必要なさまざまなモノやコトをつくる。趣味の領域で何かをつくる人も多いでしょう。さらに言えば、そこで人は自分自身をつくります。とりわけ子どもにとって、自分を形成していく大切な場所です。自己形成の過程において親に反発し、ときに喧嘩や暴力が発生することさえある。こうした複雑な現象こそが住まいの面白さであり、捉えがたいところだと思っています。
つくりあげていく場としての住まい
日本の社会学において、住まいは取り上げられにくいテーマでした。たとえば労使関係なら労働者と雇用者(あるいは資本家)という異質なもの同士の関係が問題となり、対立や協調といった社会学の主題を見出しやすい。ところが日本語の「住む」「住まい」という言葉からは、そのような関係性が示唆されにくいのです。この分野の研究が盛んな国のひとつはイギリスですが、英語で住まいを指す「ハウジング」のもとになる動詞houseは「住まわせる」「収容・所蔵する」という意味があり、ハウジングという言葉から「住まわせる者」と「住まわされる者」という関係が示唆されます。そこには、権力と抵抗、交渉や合意といった社会学の主題があり、人種、階級、福祉国家というテーマとも深く関連し発展してきました。
情報誌CEL