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情報誌CEL

湯澤 規子

2025年09月01日

大阪の胃袋 第12回 ミックスジュースの謎を追う ―― 魅惑のまぜこぜ文化

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2025年09月01日

湯澤 規子

都市・コミュニティ
住まい・生活

コミュニティ・デザイン
食生活
ライフスタイル

情報誌CEL (Vol.137)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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秘密の食卓

個々人、個々宅の日々の食卓はお互いに知らないことが多い。ところが、この連載を読んだという人から「じつはうちでも……」とその秘密を打ち明けられることが増えた。エッセイ執筆の嬉しい効果である。
その打ち明け話の中で、大阪にルーツがある複数の人が語ったある共通の話題がある。それは「週末の食卓と父親とミックスジュースの関係」についてである。前回私が書いた、父が作るミックスジュースという一言を読んで、大学事務職員の女性が「じつはうちも父が週末にミックスジュースを作ってくれてたんですよ。なんで父が作っていたんでしょうね」とつぶやき、同僚の男性教員が「そういえばうちもなぜかミックスジュースは父親が作っていたなぁ……」と語り始めた。
私の父とミックスジュースとの出会いは幼少期(1950年代頃)、父親(私の祖父)と一緒に南海平野線(現・大阪メトロ谷町線)田辺駅前にあった「田辺温泉」へ行き、その帰り道に線路沿いにある喫茶店に寄って飲ませてもらったのが最初だったという。父のその経験が後に家族にふるまう一杯のミックスジュースとなり、私が親しんだ週末の食卓の風景へとつながっていく。
大阪名物として主に元祖といわれる喫茶店で口にする、あるいは飲料メーカーの既製品を飲むというイメージで全国に知られるミックスジュースだが、私にとっては、そして打ち明け話をしてくれた人たちにとってそれは、自分の家の食卓にのぼる一杯のジュースの話であり、父親との思い出話なのであった。およそ1970 〜80年代の話である。


バナナとみかんの缶詰が生み出す魅惑の味

ミックスジュースには何が入っているのか、そのレシピを確認しておこう。私の父は牛乳、バナナ、あり合わせのフルーツの缶詰、砂糖、氷、卵を入れていた。後に私たち子どもの「卵は入れないで」というリクエストで卵は入れなくなったが、大人になってからミルクセーキには卵を入れるレシピがあると知った。父のレシピもあながち間違いではなかったわけである。1969年に創業した「梅田ミックスジュース」が公開しているレシピには、缶詰みかんと黄桃(シロップも含む)、バナナ、ミルク、上白糖、氷とあり、それと比較しても父のレシピは大阪のミックスジュースそのものだったことになる。