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情報誌CEL

弘本 由香里

2025年09月01日

再見 上町台地 今昔タイムズ 第3回 四天王寺から紐解く、遍く救済・再生の物語

作成年月日

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備考

2025年09月01日

弘本 由香里

都市・コミュニティ
住まい・生活

コミュニティ・デザイン
地域活性化
ライフスタイル

情報誌CEL (Vol.137)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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歴史都市・大阪の背骨に当たる上町台地をフィールドに、2013年秋から2024年春にかけて、約10年にわたり20号を編集・発行した『上町台地 今昔タイムズ』。過去との対話を通し、現在を見つめ直し、未来へつなぐ歴史実践として、改めて共有したい観点を取り上げてレビューする。


はじめに ― よみがえり続ける四天王寺 ―

本連載の第1回「災害と福祉に見る"共"の知の継承と文化」、第2回「災禍と祝祭を生きた若き群像とレガシー」の、いずれにも登場する重要なランドマークの一つが、四天王寺[*1]だ。
第1回で紹介した、室戸台風(1934年9月21日)による「四天王寺五重塔倒壊の図」(長谷川小信による木版画、『上方』第46号表紙)は、大災害の衝撃を強烈に訴える。一方、大阪の社会福祉事業の源流が、聖徳太子の窮民救済の実践にあるとの共通認識が脈々と息づいていることにも、驚かされる。さらに、第2回で触れた、第5回内国勧業博覧会の開催時(1903年)に、同寺において聖徳太子千三百年御聖忌に合わせてつくられた大釣鐘が、科学万能社会の到来に警鐘を鳴らすかのように披露されたエピソード[*2]も、印象深い。
遡れば、四天王寺は聖徳太子の発願で鎮護国家と万人救済の実践所として、上町台地に創建された日本最初の官寺である。1430年もの長きにわたり、数々の戦火や災害に見舞われながらよみがえり続け、人々の暮らしとともにあり続けてきたのはなぜか。



[*1]四天王寺は大阪市天王寺区にある、聖徳太子建立の寺。天台宗に属していた時期もあったが、第二次世界大戦後すぐに独立し、全仏教的な聖徳太子の精神を重んじ和宗総本山となった。

[*2]「四天王寺大釣鐘」は、戦時体制下の1942年に解体・金属供出され、失われた。大鐘楼は現在の英霊堂で、大阪市指定文化財。