
齋藤 玲子
2026年09月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2026年09月01日 |
齋藤 玲子 |
都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.139) |
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1970年大阪万博の跡地、万博記念公園にある国立民族学博物館(みんぱく)。
1974年創設以来、世界各地の文化を物語る膨大な収蔵品を蓄積してきた。
そのなかから毎回一品を取り上げ、収集の背景や研究者の思いを通して、世界の多様な文化に迫る。
「アイヌの文化」展示場入り口に、途中まで開かれたファスナーをかたどった木彫がある。サイズは縦約120×横50×厚さ3㎝。隙間からのぞくのはアイヌ文様だ。上部は木彫の盆、下部(背面)は衣服に用いられる文様で、それぞれ男性と女性の手仕事を象徴するという。作品名は「アイデンティティ3」。アイヌとしての自分を見せたり隠したりしながら生きる、現代のアイヌの姿がそこに刻まれている。
作者の貝澤徹さんは北海道道央の平取町二風谷生まれ。明治の名工、貝澤ウトレントクを曽祖父にもち、イタ(盆)やマキリ(小刀)などを制作する一方、独創的な木彫作品を生み出すことに力を入れてきた。
みんぱくで「アイヌの文化」展示場が公開されたのは、みんぱく開館2年後の1979年。アイヌ民族を先住民族と認めた国会決議は、それから約30年後の2008年だった。そうした時代に、アイヌ文化を日本の一地方文化ではなく、独自の民族文化として紹介していたことには大きな意味があった。
みんぱくでは2008年から常設展示のリニューアルが始まり、2016年の「アイヌの文化」展示場で一区切りを迎えた。この展示場のリーダーとして再構成を中心的に担ったのが齋藤玲子さんだ。従来の展示が伝統的なものを前面に出していたのに対し、新しい展示では、現代を生きるアイヌの多様な文化や継承の姿を、工芸作品や映像で表したいと考えたという。貝澤さんの「アイデンティティ」シリーズは、その考えに重なるものだった。シリーズの第1作を見て強く心を動かされた齋藤さんが新たに依頼し、この「アイデンティティ3」は制作された。
齋藤さんはいま、現代のアートへとつながるアイヌ工芸の歴史や、アイヌ・コレクションの形成史に関心を寄せている。みんぱくに残されている戦前期の資料を、ほぼ毎年、アイヌ文化の伝承者や工芸技術者に見てもらう機会があるそうだ。
情報誌CEL