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情報誌CEL

山納 洋

2025年09月01日

CELからのメッセージ 「伝える」をあきらめないために

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2025年09月01日

山納 洋

住まい・生活
都市・コミュニティ

ライフスタイル
コミュニティ・デザイン
消費生活

情報誌CEL (Vol.137)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

取引の当事者間で持っている情報に差がある状態のことを「情報の非対称性」といいます。商品について買い手が十分に知らない場合、売り手は品質を偽って高く売るかも知れない。企業と消費者との間で起こり得るこのリスクを防ぐために、売り手には買い手に対して誠意をもって伝えることが、買い手には正しい情報を提供するよう売り手に働きかけることが求められてきました。ですが近年、インターネットやSNSの普及により、情報を得ることも発信することも容易になった反面、どの情報が正しいのか分からない、どう伝えれば正しく伝わるのか分からないというように、私たちを取り巻く"情報問題"はより複雑化しています。そうした問題意識から、今回の特集では「伝えること/伝わること」について考えてみました。
ネット上には現在、フェイクやデマなどの情報も溢れていますが、それは発信側の誠意が欠けているからだけでなく、受信側が分かりやすさや物語性を求めているからでもあります。このことを上智大学教授の佐藤氏は「情報の正確さではなく、情動で動く社会」と表現し、今必要なのは、「あいまいさに耐えて不要な情報を聞き流すネガティブ・リテラシー」(26頁)であると述べています。ブックカルチャークラブ・中西氏のZINEに関する実践は、「伝えたいこと」が誰かに伝わるという経験を多くの若者たちが求めていることを示しています。
もう一方の「どうすれば伝わるのか」については、言語学者の川添氏によると「言葉とはそもそも正確には伝わらないもの」(21頁)であり、ジャーナリストの堀氏は「小さな主語」で語ることの重要性を指摘されています。私たちは、自分と他人は同じで、「これで伝わるはず」と思い込み過ぎているのかもしれません。サイレントボイスの尾中氏は「コミュニケーションをあきらめないことが大事」(18頁)と語っておられます。
京都教育大学名誉教授の山下氏と前田研究員との対談では、現在の教育の現場では、子どもたちが主体的に学ぶことをより重視し、偏りのない情報を提供することが求められていると知りました。
エネルギー・文化研究所は設立当初より、長期的視点と広い視野に立って社会の状況、動き、未来のあり姿を研究し、伝えていくことをそのミッションとして掲げてきましたが、改めてそのことを心に留めて情報発信をしていきたいと考えています。