
情報誌CEL
「伝える」の未来のために、今、できること ―― 当事者の声、小さな主語で「分断」を乗り越える
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
2025年09月01日
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堀 潤 |
住まい・生活
都市・コミュニティ
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ライフスタイル
コミュニティ・デザイン
消費生活
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情報誌CEL
(Vol.137) |
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現代を生きる私たちは新旧無数のメディアを介し、20世紀とは比較にならないほど圧倒的な量の情報と接しつつ、対話や共感に活かせないまま、個人、社会、国家にいたるまでいたずらな「分断」と「対立」に陥っている。
あふれるニュースの洪水に流されることなく、これをしっかり受け止め、健全な発信をするには今、何が必要か?
主宰する市民ニュースメディア「8bitNews」をはじめ、常に現場主義、当事者と共に発する報道に挑み続ける堀潤氏に、多くの課題や矛盾と向き合うジャーナリストの立場から、「伝える」ことが分断を生む背景、その乗り越えについて伺った。
イデオロギーや主張で惹き付けるのではなく、利益に絡め取られたようなメディアでもなく、本当の意味で公パブリツク共的なメディアが社会に必要だと思っています。
それで2013年のNHK退局後も、よく「フリーのNHKです」などと自己紹介しています。日本は「公共放送=NHK」のイメージが強く、冗談にも聞こえますが、世界に目を向けるとアメリカには数百を数える非営利の公共テレビ局[*1]が、歴史的にも大きな役割を果たしてきました。イギリスもBBC(British Broadcasting Corporation)が有名ですが、チャンネル4などの公共サービス放送事業者もあります。「公共」の意味合いも、ただ国営であるとか、受信料を取るとか、広告がないといったことではありません。
また現状、日本の既存メディアは経営環境を取り巻くさまざまな制約から、一次情報をじっくり丁寧に伝える力を失いつつあるように見える。だからこそ、ニュースの当事者である一般の人々と協力しながら大切な「事実」をすくい上げて伝えたい。この十数年、それをずっと続けてきたつもりです。
「伝えたい」当事者の声を出発点にすること
「当事者と共に伝える」という手法が顕著な違いを生み出すのは、やはり災害現場でしょう。
[*1]全米で1700以上あるテレビ局のうち、非営利のテレビ局はおよそ380局。非営利の全国ネットワークであるPBS(Public Broadcasting Service)も存在する。