栗本 智代
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2022年09月01日 |
栗本 智代
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都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.131) |
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語りと映像に音楽の生演奏を加えた独自の手法により、地域の歴史や文化、まちの物語を伝えてきた「語りべシアター」。コロナ禍での活動継続のため、初めて、オンライン視聴者に向けて新たな形式で作品をつくり、収録・公開した。その制作過程を振り返りながら、今後の展望も含めて報告する。
「語りべシアター」の活動趣旨と展開
「語りべシアター」の活動を立ち上げたのは、1994年のことである。
当時、関西の中でも特に大阪は、豊潤な歴史・文化的資源があるにもかかわらずその魅力があまりに知られておらず、まちに伝承力が乏しいことが非常に問題であると捉えた。この対策として、まず、地域に眠る歴史や文化を掘り起こし、まちの物語を多くの人に知ってもらい、わがまちにもっと誇りを持ってもらうことが大切だと考えた。
そこで"楽しくわかりやすく"伝えることを重視し、短いストーリー仕立てにしたシナリオを起こし、語り(朗読)と映像、そして音楽の生演奏や演劇的な演出を交えた独自の表現手法を創った。大阪から阪神間へとフィールドを広げながら、自治体の記念行事や民間団体の勉強会で公演を重ね、2019年には、在シンガポール日本国大使館関連部署の記念事業にも招待され、大変好評をいただいた。同時に裾野を広げるため、ワークショップ形式で語り手・作り手の育成も順調に進めてきた。
ところがコロナ禍で、活動中止を余儀なくされた。そんな中で、オンラインであれば発信できると、新たな形式による作品制作への手探りが始まった。
オンライン配信に向けて
記録用に公演の模様を動画収録したものは、実際に舞台を見た記憶を回想するにはよいが、ライブならではの臨場感は十分には伝えられない。特に「語りべシアター」は、スクリーンに映写するパワーポイント映像・語り・演奏の三者のライブならではのコラボレーションにより高い訴求力を創出するため、記録映像では魅力が半減してしまう。しかし、オンライン配信の普及に合わせ、そのなかでいかにオリジナリティを維持しながら"楽しくわかりやすく"伝えられるか、実験的に挑戦することになった。
2020年度、最初の試みとして、大阪の代表的な年中行事であり、疫病退散の祈りをこめた祭である「天神祭」をテーマに、オンライン配信用の作品を制作・配信した。