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情報誌CEL

新谷 尚紀

2011年09月30日

土と暮らしの民俗学 - 生活に豊かさをもたらす土の文化

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2011年09月30日

新谷 尚紀

エネルギー・環境
住まい・生活

地域環境
ライフスタイル

情報誌CEL (Vol.97)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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-田舎の香水-

 2010年10月、ポーランドのポズナン市にある国立アダム・ミツケヴィチ大学の民族学科が中心となって国立科学アカデミーとの共催で欧州国際民族学研究大会が開催されました。それに日本の民俗学の立場から高度経済成長と生活変化についての研究発表をしてほしいと招かれたとき、見学地として何かリクエストはないかと訊かれた私たちは、カトリック信仰のあついポーランドの人たちが11月1日の万聖節と2日の万霊節を前にして、さかんに墓掃除をしているふつうの墓地の見学をしたいと言いました。そこで案内された郊外の農村の墓地に着いて自動車から降りたときに驚いたのは、あのものすごい臭いでした。それは、昭和23(1948)年に広島県西北部の中山間地農村の農家に生まれた私にとって、子供のころの「田舎の香水」の記憶をよみがえらせてくれました。まさしく牛馬の糞尿から作る堆肥の、あれの何倍かというほどの強烈な臭いでした。見学した墓地の墓掃除の様子や墓参りについて得られた情報はそれなりに興味深いものでしたが、それ以上に、あらためて臭いと悪臭の生活史という観点が浮かび上がってきました。
 日本でも、第一に化学肥料の普及が農村からあの臭いを、第二に冷凍施設の充実が漁村からあの臭いを、第三に水洗トイレの普及が便所からあの臭いを、第四に洗濯機や洗剤やナプキンの普及が汗や垢や経血などのあの身体の臭いを消していった生活の歴史がありました。いずれも日本では昭和30年代から40年代の約20年間の高度経済成長期を境に起こった変化でした。それは清潔へ衛生へという大きな変化でした。西暦で言えば1955年から75年の約20年ですが、終戦が昭和20年なのでこの時期の区分は昭和の年号による方が当時の実感にあいます。経済史学では正確を期して1973(昭和48)年の第一次オイルショックまでを高度経済成長期ととらえますが、民俗学では多くの人たちの生活の変遷史に注目するので、その後の長い変化の過程、そしてその地域差などにも注目します。

-土壌に育まれた生活-

 経済企画庁の統計によれば、高度経済成長期やバブル崩壊などを経た後の1995年には5.3%、約345万人しかいなくなった農林水産業の従事者が、高度経済成長期以前の1950年には45.1%、約1610万人もいたことが知られています(※1)。高度経済成長期以前には日本人の多くが土壌と農業とを基盤として長いあいだ生活してきていたのです。その農業の基本は食料の生産にあります。私たちの食料を供給してくれるのが農業であり、その基盤が土壌です。ではその土壌とは何か。土壌学の専門家は土壌の役割について次のように4つに整理しています(※2)。

(※1)暉峻衆三「高度経済成長と農業・農家・農村」『ワークショップ1「高度経済成長期の都市と農村」報告・討論記録集』国立歴史民俗博物館(2007)
(※2)久馬一剛『土とは何だろうか?』京都大学学術出版会(2005)

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