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情報誌CEL

早川 千晶

2012年11月01日

ケニア発 ケニアのスラムに生きる

作成年月日

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備考

2012年11月01日

早川 千晶

住まい・生活
都市・コミュニティ

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情報誌CEL (Vol.102)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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 私はケニアで暮らして23年になる。ケニア最大の貧民街、キベラスラムの奥で、孤児や貧困児童、労働させられていた子どもたちのための駆け込み寺をスラムの仲間たちとともに作っている。
 私がこのスラムと関わるようになったのは、まだ20代の頃だった。私は彼らの貧しい暮らしぶりに同情して「援助」をするためアフリカにやってきたわけではない。むしろ、彼らの暮らしの中に、目を見張るような様々な工夫や助け合いのシステムが存在していることに強い魅力を感じて、惹きつけられたことがそもそものきっかけだった。
 どん底ともいえる貧困の中で、彼らは一日一日を生き抜いていくことに全力を尽くしていた。土壁にトタン屋根をかぶせただけの崩れかけたような長屋に住み、その住まいには電気も水道もなかった。スラムとは違法の居住区のことで、他にどこにも行きようのない貧しい人々が空き地に掘っ立て小屋を建て、そこに次から次へと貧困者が流れ込んできて、想像を絶するような人口密集度で暮らしている。行政からの生活条件の整備はまったくない。病気になっても医療保険はなく、年をとっても年金もない、失業保険も生活保護もない彼らにとって、工夫と助け合い、そして日々の努力なくしては今日を生きることはできない。そんな彼らの姿は、強い生命力を放っていた。私はその迫力に魅了されて、スラムで生きる彼らに興味を持って出会っていったのだ。
 彼らはゴミをとことんリユースする。空き缶で灯油ランプを作り、ドラム缶で鍋や七輪を作る。古タイヤはサンダルに変身し、廃車になった車のボディはリヤカーになる。穴の開いたバケツは修繕して使う。そんな彼らのクリエイティブさが非常に面白く、若かった頃の私は夢中になってスラムの中を歩き回ったものだ。
 スラムの貧困者たちは人と人のつながりの輪の中で生きていた。誰かが病気になったときや、火事で焼け出されたときは、友人、知人、近所の人々や同じ地方の出身者などが集まり、なけなしのお金を出し合い、困っている誰かを助ける。身寄りのないお年寄りが病に倒れ、寝たきりになったとき、近所の人々がその人に食べ物を届け、体を洗ってあげている姿を見た。親が病に倒れた子どもたちを自分の家に連れていき、食事をさせる近所の人々もいた。もちろん、貧困の暮らしはひもじく、やるせないことが多々あるが、それでも、この人間同士のつながりの輪の中で生きている自分は孤独ではなく、幸せだと感じると多くのスラム住民は言う。そして彼らには夢があり、未来への希望がある。今は苦しくとも、がんばれば、きっともっと良い明日になるはずだと多くの人々は信じている。
 人間にとって真の幸福とは何なのか。命の価値、命の本質とは何なのか。その根源的な問いを見つめ続けていくことが大切だ。違う現実を生きる者同士、私たちは助け合い学び合うことができる地球の仲間だと思う。私はケニアのスラムから、今日を精一杯生きる人々の声を発信し続けていきたいと願っている。
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