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太田 順一

2012年07月10日

連載フォト・エッセイ 「耕す人々」(5) 肉となった牛に「ありがとう」

作成年月日

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2012年07月10日

太田 順一

エネルギー・環境
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情報誌CEL (Vol.101)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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肉牛畜産には繁殖と肥育の2種がある。母牛を飼って子牛を生ませるのが繁殖農家で、その子牛を買い取って育てるのが肥育農家。但馬牛のふるさと・兵庫県美方郡加美町の田中一馬さん(34)は繁殖農家のほうで、現在、50頭の母牛を飼育する。牛舎の建設など莫大な初期投資が必要なため新規参入は難しいとされる畜産界にあって、24歳のとき「田中畜産」を設立し5頭の母牛を飼うことから出発した。
ひたむきな夢追い人なのだ。牛を心底、愛していて、“牛飼い”を子どもが憧れる職業にしたいという。

 母牛のことを、お産を経た牛という意味で「経産牛」という。しかし田中一馬さんは敬意を込めて「敬産牛」と表記する。繁殖農家である自分は母牛に食べさせてもらっているんだ、との思いがあるからだ。
 母牛もまた繁殖の役目を終えると肉になる。通常、1年ほど穀物主体のえさを与え太らせてから出荷するのだが、田中さんは業界の常識を破ってその間、牛舎ではなく山の牧場に放って草を食べさせる。飼料のほとんどを輸入に頼っているのが日本の現状で、かつて輸入飼料のカビ毒で5頭を死なせてしまった、そのつらい経験があるからだ。それに放牧は山を荒廃から守り、地域農業の活性化につながるとの考えもある。
 2年前から「放牧敬産牛肉」のインターネット販売を始めた。真空パックした肉を送るとき、通り一遍ではない、長い手書きの手紙を必ず添える。そして、肉となった牛がどんな牛だったのか、その名前や性格、飼っていたときのエピソードなどを記した、写真入りの冊子を一緒に入れる。肉を食べるとき、誰も牛のことまで思い浮かべはしない。肉は肉なのだろう。しかし、牛に寄り添い屠場で最後を見届ける田中さんは、ほんの少しでもいいから牛のことを知ってもらいたい、と強く願うのだ。

 ──取材の最中に電話がかかってきて、田中さんは中座した。でも隣室から声が聞こえて話の内容は分かる。ネット販売の代行業者が業務を委託して販路を拡大するよう盛んに勧めているのだ。丁重に断った田中さんは、戻ってくるとこういった。

 「今、2頭の肉を売っていますが、これを一気に20頭にしようなんて考えないです。お客さんとは関係を大事にして、一生、付き合ってもらえる“牛飼いの肉屋”になりたいですからね」

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