CELは、Daigasグループが将来にわたり社会のお役に立つ存在であり続けることができるように研究を続けています。

エネルギー・文化研究

  • サイトマップ
  • お問い合わせ
  • 大阪ガス総合トップ
  • 大阪ガス

JP/EN

Home > 論文・レポート検索 > 家族主義の定着と変容−ライフコースがはらむ新たな問題

論文・レポート検索

Search

情報誌CEL

岩井 八郎

2010年10月01日

家族主義の定着と変容−ライフコースがはらむ新たな問題

作成年月日

執筆者名

研究領域

カテゴリー

媒体(Vol.)

備考

2010年10月01日

岩井 八郎

住まい・生活

ライフスタイル
その他

情報誌CEL (Vol.94)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

−ライフコースと家族主義−
 日本人の人生のあり方が、変化の時期に直面している。非正規雇用の拡大、失業率の高まり、転職の増加、高等教育進学率の上昇、新卒者の就職難、専業主婦の縮小、初婚年齢の上昇、少子高齢化の急速な進行、所得の低下と所得格差の拡大など、「失われた10年」と呼ばれた1990年代半ばからの10年間を経て、現在までに生じた様々な現象は、日本人がこれまで自明としてきた人生のパターンが崩れ始めたことを示している。
 1970年代から90年代に至るまで、高度経済成長期以後の低成長時代を乗り切った日本社会は、国際的には安定したシステムだとみなされてきた。男性の標準的な人生は、学歴や職業に違いがあるが、学校教育から職業への移行がスムーズであり、失業率も低く、定年までの職業が保障されていた。女性についても、既婚女性の就業率が上昇してきたが、M字型就業曲線の持続が示すように、性別役割分業型の人生モデルが定着していた。
 このような日本社会の特徴は、男性を稼ぎ手、女性を家族の世話の担い手とする性別役割分業が維持されている点に加え、高齢者における子どもとの同居率が高く、人々の福祉が家族とのつながりの中から生み出されるとする通念が根強いこと、企業の従業員とその家族に対する福利厚生が手厚いことから、「家族主義」と呼ばれている。また教育費が家計に大きく依存していることも、ここに含まれる。この家族主義は、家族のような人間関係の親密さを求めるという意味ではなく、家族において男女間や世代間の相互依存関係が重視されることを指している。
 日本社会では1990年代まで、この家族主義が、政策的にも一般的な人々の意識においても定着していた。しかし、それを支えたシステムの行き詰まりが、近年生じている人生のパターンの変化と密接に関係している。その行き詰まりの問題は、女性の就業機会と家族形成との関係、ならびに子どもと同居する高齢者世帯の特徴にもあらわれている。
 小論では、ライフコース研究の成果を用いて近年の変化を説明し、今後の方向性と課題を考察したい。

−団塊の世代のライフコース−
 まず、第2次世界大戦後の1947年から49年までに生まれ、「団塊の世代」(第1次ベビーブーム世代)と呼ばれた人々のライフコース(人生の道筋)を取り上げてみよう。人口規模が大きいこの世代は、高度経済成長期に教育を受け、1970年代に20代を過ごし、「豊かな」日本社会の中で成人生活を送り、現在では退職の年齢を迎えている。女性は高校を出て正規雇用として働き、25歳までに結婚して退職、2人の子どもを持って、子どもが小学校に入ると家計のためにパートに出るといった道筋を辿る人が多かった。男性では、大学進学率はまだ低かったが、定年まで安定した職業生活が保障されてきた。