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情報誌CEL

大久保 幸夫

2010年10月01日

日本の雇用における諸問題と論点

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2010年10月01日

大久保 幸夫

住まい・生活

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情報誌CEL (Vol.94)

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−世界的に見て日本は若年雇用に手厚い国−
 最近は「世代間格差」という表現で、年齢階層別の雇用機会や賃金配分の偏りを指摘する声が聞かれるが、私には、そうした主張は日本の現状に即しているとは思えない。それは次に述べる理由からだ。
 欧米諸国では、伝統的に中高齢者の雇用維持のため、若年者の新規雇用を犠牲にする。長年にわたって技術ノウハウを蓄積し、世帯主でもある中高齢者の雇用を優先的に守る社会的傾向があるのだ。その結果、若年層の失業率が高くなり、若年雇用が各国で大きな社会問題にもなっている。
 これに対して、日本は年齢に関係なく雇用を維持しようとする姿勢が非常に強い国であり、まして若年者を優先的に解雇できるわけでもない。むしろ景気が悪いと企業は若年雇用を維持しようとする。日本型の雇用調整は「リストラ」と称して、中高年層の早期退職優遇や退職勧奨をし、中途採用も抑制する。それにもかかわらず多くの企業では新卒採用は継続している。こんな国は世界中を探しても珍しい。
 その上、日本の場合は少子化で若年人口の減少が明らかなので、企業では組織の年齢構造を維持する力が働く。2004〜2007年頃、新卒採用が過熱状態になったが、これは団塊の世代が一斉退職する「2007年問題」を各企業が予期して若年者を積極的に採用した結果だ。若年雇用によって組織の年齢構造の偏りを改善しようと考える日本企業は多い。
 つまり、雇用機会の年齢層別配分という観点では、欧米諸国で起こっているような若年層の雇用機会喪失といった問題は日本には見当たらない。世界的に見れば、日本は若年層の雇用に手厚い国とさえ言える。ただしそのこと自体、良いとばかりも言い切れない。若年者に雇用機会を与えて職業能力を育て、次の世代をつくるという意味では良いが、そのために世帯主である中高齢者の雇用が維持されなくなれば、失業率が高まり、社会が不安定になるからだ。
 世代間における賃金配分で、「格差」を強調する人もいるが、これも的外れだ。日本企業は昔ほどではないが年功序列の傾向が強いため「年功賃金」を実施している企業が多い。若い人の賃金が安くて、年齢が上の人の賃金が高いので格差が生じている。これが「世代間格差問題」の根底にある。加えて高齢化という背景もある。もともと年功賃金は40、50代になると、子供の教育費もかかるから、その分手厚くするように生活賃金の要素が入っており、これが日本の賃金制度の根幹をなしてきた。そこに傾斜が存在しているのは「格差」でよろしくない、と言うならば、生活賃金自体を否定することになる。