
豊田 尚吾
                 
                
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                   2002年01月01日  | 
                
                    豊田 尚吾
                    
                    
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                 住まい・生活  | 
                 消費生活  | 
                CELレポート (Vol.12)  | 
                
                
                
                
不景気の度合いが深刻さを増すにつれ、政府の経済政策に対する批判や異論が散見されるようになった。ここではその中でも比較的良書(理論に則った、あるいは現実のデータを精査したような分析を含むもの)と思われるもの4冊を取りあげ、論じてみたい。4冊とは、発行日順に「日本経済の罠−なぜ日本は長期低迷を抜け出せないのか−」(小林慶一郎・加藤創太、日本経済新聞社2001 年3 月)、「構造改革という幻想−経済危機からどう脱出するか−」(山家悠紀夫、岩波書店2001 年9 月)、「誤解だらけの構造改革」(小野善康、日本経済新聞社2001 年12 月)、「構造改革論の誤解」(野口旭・田中秀臣、東洋経済新報社2001 年12 月)である。「日本経済の罠」は発行が3月で、いわゆる小泉改革を批判したものではないが、内容的には以前からあった構造改革論に対する分析を含んでいるので、この中に含めてもよいであろう。と言うよりも、むしろこの書籍が重要な問題提起をしており、それに対する論争が起こっている。この4つの書籍は程度の差はあれ、小泉改革を含むいわゆる構造改革論を批判しているのであるが、不景気の原因分析およびその処方箋は違う方向を向いている。その意味で、マクロの景気を考える際には、これらを読み比べることが興味深く、有用であると感じた次第である。
一方、この4書に共通している主張もある。それは不景気の原因が、基本的には「需要不足」であるという認識だ。つまり、供給要因(サプライサイド)の非効率性ではなく、有効需要不足(デマンドサイド)による需給ギャップが景気低迷をもたらしていると考える。そして、構造改革とは供給面での非効率性を改善することであり、それがいかに有効需要を創出するか(つまり、どうやって景気回復に導くのか)のロジックが構造改革論にはないとの見解も、ほぼ共通している。しかし、そこから先は、各書の主張はかなり(場合によっては全く)異なっている。以下、発行順に検討してみたい。
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