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情報誌CEL

桜井 律郎

2004年03月26日

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2004年03月26日

桜井 律郎

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情報誌CEL (Vol.68)

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 前季号の特集は「木」で、今季号は「火」だ。元素ではないにしても、まるでテーマが「基本的な要素」風のものに還元されていくようだ。

 「木」と「火」といえば、今なら、去年一○月下旬から一一月上旬にかけて、三○ヘクタールの山林を焼き尽くした史上?最大級の米国カリフォルニア州南部の火災が思い浮かぶ。しかし、なにもそんな超弩級の火を持ち出さなくても、「火」についてなら、いろいろ思いを巡らせるのに苦労はない。

 フランスの(詩魂あふれる)科学哲学者G・バシュラールは、詩人の想念と化学反応を起こすが如く詩人の想像力を刺激する「元素」として、火、水、空気、大地の四つを取り上げ、それぞれと詩的想像力との関係について、主として過去の文学作品(詩、小説)を資料として使いながら詳細に論じた作品を残している。

 火については、主に『火の精神分析』(初期の作品)や『蝋燭の焔』(末期の作品)の中で論じており、“火は、「(有史以前の)原初の世界への回帰」や「天(や大地!)に向かっての上昇」などについて強いイメージを喚起する”という。また、“火による浄化”に代表される良いイメージの対蹠に、“地獄の劫火”に代表される悪いイメージも併せ持ち、イメージの自己矛盾を平気で抱え込む力があるらしい。

 そんな火のイメージやイメージ喚起力が、また、多くの宗教者にとりあげられ、宗教儀式に火がよく使われる理由でもあるだろう。典型は、ゾロアスターその人およびゾロアスター教(拝火教)ということになるが、ゾロアスター教の影響を強く受けた、というより混交したといえるローマ帝政期に流行したミトラ教(ミトラス教)、すぐ後を継ぐように隆盛し、唯一宗祖自らが書いた経典を持つマニ教などは、儀式によく火を使う宗教の中に容易に数えることができる。それらとの激しい教義論争を経て、今日の地位を築いたキリスト教も儀式に数多くのローソクを使う。仏教も同様である。単に照明のためのみとは思えない。

 宗教的観想には、ローソクの炎がよいのではないか。ローソクの炎が、あまりに時代遅れなら、暖炉の炎の前で瞑想にふけるのも贅沢で有意義な時間のすごし方だろぅ。暖炉の火を見つめて、空想の翼を広げてみてはどうか。子どもの想像力を涵養するのに最適ではないか。情操教育にもよかろう。ひょっとしたら、その子は、バシュラールのような優れた哲学者になれるかも知れぬ。  ――桜井律郎