
小松 和彦
2004年03月26日作成年月日  | 
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                   2004年03月26日  | 
                小松 和彦  | 
                 エネルギー・環境  | 
                 エネルギー・ライフスタイル  | 
                情報誌CEL (Vol.68)  | 
                
                
                
                
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火は文化の創造の基礎
火は人間にとって欠くことのできないものであって、人間の文化の発達は、火を人間が管理することができるようになったことに依っているといっても過言ではない。火が作り出す熱と光が今日の文明をもたらしたのである。人は火によって、闇を追い払い、寒冷地への進出を果たし、害獣を追い払い、調理した食物を作り出し、自然を開発(ある意味では破壊)して人間の側に取り込み、その周囲に人を集めて仲間を作り、その結果としてのさまざまな文化物を作り出してきた。このことは、もし現代人が火を管理する能力を失った状態を想定すればすぐにわかる。地球上のほとんどの人々がたちどころに死滅し、生き残った者もその行動を大幅に縮小せざるをえなくなってしまうからである。火は人間の生命を根本的なところから支えるものなのであり、文化の創造の基礎なのである。
火は、暖を取る、灯りとする、害獣を追い払う、といった実用的な側面だけではなく、そうした側面を背景にして、象徴的あるいは宗教的な意味や役割も担ってきた。それは火をめぐる想像力の産物としての文化といってもいいかもしれない。わたしがここで考えてみたいのは、こうした火をめぐる信仰の「語り」と「実践」である。
火をコントロールできるのは、人間だけである。人間だけが火を作り出すことができる。しかし、原初の火は人間が作り出したものではない。それは人間が生まれる以前から、生物がこの地球上に誕生する以前から存在していた。自然のなかに存在する火を生活のなかに持ち込んで、暖を取ったり、灯りにしたり、食物の調理に利用するようになったのである。世界各地のさまざまな民族・文化集団に伝わる、火の起源をめぐる神話には、そうした記憶が刻み込まれているのである。
情報誌CEL