
橋爪 紳也
2004年06月30日作成年月日  | 
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                   2004年06月30日  | 
                橋爪 紳也  | 
                 都市・コミュニティ  | 
                 まちづくり  | 
                情報誌CEL (Vol.69)  | 
                
                
                
                
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都市のリノベーション
「都市再生」の真意は、かつてあった都市のありようを復活させることにあるのではない。「再生」ではなく「創生」であり、また「復興」と呼ぶべきであろう。むしろリノベーションという概念こそふさわしい。
戦後の高度経済成長期にあっては、大量生産大量消費時代に応じて工業化社会の高度化を進めてきた。それに対応するために、工場などの都市部への集中をさまたげる政策がとられてきた。いっぽうで工場等の既成市街地内での立地が制限された。東京・大阪を結ぶ国土軸の強化を補完するべく、新産業都市の創出など地方の産業振興を促す施策が進められてきた。国土の均衡ある発達を願い、公害などの社会問題を考えるならば、最善の選択であったのだろう。
「集中」に対して「分散」「多極化」という概念が呈示された。しかし現状では東京一極集中はとどまることはなく、むしろ拍車がかかっている。いっぽう、分散志向の強さが類似の施設を各地に建設する結果となった。私たちが描かなければいけないビジョンは、従来とは異なる都市の創造である。すぐさまにとりかからなければならないのは、次世代に有効な都市基盤の構築である。人口が増え、常に右あがりの経済成長を続け、各地域が類似の都市化と発展を果たしていた時代とは、あきらかに異なる理想をかかげなければならない。抽象的にいえば、それは地域ごとの判断によって、地域ごとに独自に未来を描ききる能力であろう。
次世代型の都市基盤は、都市ごとにばらつきがあり、多様であればあるほど良いのではないか。「横並び」「標準化」ではなく、「得意技」を徹底的に伸ばすという選択をなしていくべきだ。そこにあって土地に根ざした歴史的な資産や、地域の人々が培ってきた生活文化に関わる諸資産を活用することの意味は、ますます重みを増す。
情報誌CEL