
天野 徹
2005年06月30日作成年月日  | 
                執筆者名  | 
                研究領域  | 
                カテゴリー  | 
                媒体(Vol.)  | 
                
                
                
                備考  | 
              
|---|---|---|---|---|---|
| 
                  
                   2005年06月30日  | 
                天野 徹  | 
                 都市・コミュニティ  | 
                 コミュニティ・デザイン  | 
                情報誌CEL (Vol.73)  | 
                
                
                
                
ページ内にあります文章は抜粋版です。
                  全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
高度情報化と組織像の変化
売れ行きの伸び悩むフォード社が、創設以来の伝統であるピラミッド型の組織構造を転換したのが大きな話題となったことは、記憶に新しい。消費社会が成熟して、顧客から細かい要望が寄せられるようになり、これへの対応の不在が業績の落ち込みの原因になっているとの認識と、旧来型の意思決定方法ではそうした要望に応えられないとの判断によるものだ。同社では、自動車を買った顧客の反応をネットワーク上で見られるシステムが導入された。「つい最近までは、私たちには情報など全くありませんでした。あえていえば、上からの命令だけが『情報』でした」とは、生産現場で働く工場ライン長の弁。同社では現場が主導権を取り、顧客の声を製品作りに生かしていこうという取り組みも始まっている。これは組織の形態を変えることにより、従来型の「コマンド駆動型経営」から、高度情報化時代の特徴の一つである「ビジョン駆動型経営」への変化が生じた例といえよう。
高度情報化時代の企業経営といえば、「コア・コンピタンスとアライアンス」という言葉が強調されたことがあった。それぞれの企業が競争力のある部分に純化し、必要に応じて他の企業と連携することでビジネスを展開するという考え方である。自社に生産設備を持たないファブレス・メーカーはその典型といえるが、世界企業ナイキが展開する経営戦略が、一国の経済問題にまで発展したことは記憶に新しい。契約を打ち切られた工場、生活基盤を失った労働者たちによる抗議行動は全世界的な展開を見せ、ナイキはついに戦略の見直しを行わざるを得なくなった。自国の経済運営について有効な対策を打てなかった政府の責任は問われなければならないが、高度情報化にも輝かしい光があれば消すことのできない影もあることを如実に示す出来事であったことは確かである。
情報誌CEL