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研究報告

三島 順子

2015年03月31日

【2013年度 生活者の意識と調査】クラスター編

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2015年03月31日

三島 順子

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研究報告

生活者の意識と行動調査はこちら

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2013年度「生活者の意識と行動」調査 report 2

エネルギー・文化研究所 三島 順子

 

1.      はじめに

2013年9月に実施した「生活者の意識と行動」調査レポートである。初回の「ライフステージと意識調査」に続き、「クラスター分析」、「行動編【食事・入浴】」、「トピックス調査【SNS、外出】」について順次報告する。

 

2.      クラスター分析とは

前回の「ライフステージ分析から見えてくるもの」レポートでも述べたように、リニューアルした生活者意識調査の分析軸は従来からの「性×年代別」(男女別、年齢別)に、「ライフステージ(以下、LS)別」と「クラスター分析」を新たに加えることになった。本レポートではこの「クラスター分析」を取り上げる。まず、クラスター分析とは「多変量解析の手法の一つ。データをある基準に基づいて集団(クラスター)に分けて分析する。コンサイスカタカナ語辞典 三省堂」である。ただし、これだけではわかりにくいので本調査のデータを例にしつつ解説する。

まず、データを「ある基準に基づいて集団に分ける」ために質問を30問、モニター回答者3000人に対して行う。本調査では「ある基準」は「〜についてどう考えるか」という、「意識」を問い、各々5段階(そう思う、ややそう思う、どちらでもない、ややそう思わない、そう思わない)で回答を求める。その回答傾向の似たもの同士をグループ化して分析するということである。価値観設問の回答類似性に基づくカテゴリーは、『文化重視』『技術志向①、②』『環境配慮行動』『利己的/利他的』『外向的/内向的』『コミュニケーションにおけるネット志向』『既製品派/手作り派』の8つに分かれた。なお、価値観質問は「A.友人や仲間づくりには積極的な方だ」「B.数少ない友人と深く付き合いたい方だ」のように相反する質問を行うことによって、結果の正確性を期すように回答を求める。

  

そうしたグルーピングの結果、本調査では回答傾向から6つのクラスターが浮かび上がった。それぞれのクラスターの特徴をもとに【巣篭り無関心】【リアリスト】【エコライク】【付和雷同】【自己中心】【外向き積極】と名付けた。次項で各クラスターの概要を述べる。

 

3.      各クラスターの特徴

6クラスターを構成比の大きいものを左から順に並べてみたのが下表である。

 

全体ではほぼ等分であるのだが、大まかなイメージとして男女別にみると男性は【リアリスト】【外向き積極】が多く、女性は【エコライク】【付和雷同】が多く、【巣篭り無関心】【自己中心】は性別による差は小さい。詳しくは後段で述べるが、年代でみれば中年から高齢者は【リアリスト】【付和雷同】が多く、男性若年層(20、30歳代)が【巣篭り無関心】【外向き積極】に二分されている。以下の項で各々のクラスターここで各クラスターについて、全体的な特徴、性×年代からみる特徴、ライフステージからみる特徴の順に述べる。全体的な特徴は価値観設問に対しての回答で「そう思う」「ややそう思う」の合計数値の上位5位と下位5位の質問に入った項目をもとに、性×年代からみる特徴は、男性、女性、合計を年代別の集計結果から、ライフステージからみる特徴は各ライフステージ内でそのクラスター内が占める上位3位・下位3位をもとにそれぞれ述べる。加えてクラスターの特徴を比較するために「最も関心のあることを身の回りのことと社会的なことを各2点お答えください。とくにない場合はなしとお答えください」という、関心事を問い、その結果をレーダーチャートに表した。レーダーチャートは関心事のうち、回答数の上位10項目(健康、消費税・増税、原発、経済、外交・世界情勢、仕事、ゲーム・娯楽・趣味、オリンピック、子供、資産関連)を選択し、全体を1とした場合、各クラスターの回答率(※)がどの程度になるかを表した。またクラスターの特徴のひとつともなっている「関心事なし」の回答の発生率も掲載する。なお、この「関心事」については直前の報道に影響を受ける傾向があり、今回の調査では内容をみる限り、2020年東京でのオリンピック開催決定に伴う「オリンピック」、福島原子力発電所事故処理に伴う「原発」がそうである。

以降の記述で使用する表現をここで整理しておく。

・反応が強い…そう思う、ややそう思うと回答する回答者が多い

・反応が弱い…そう思う、ややそう思うと回答する回答者が少ない

・子ども…親に対する関係性を示す「子ども」。

・コドモ…オトナの反対。家族の関係性を示すものではなく、乳幼児、児童等で概ね小学生以下

・オトナ…コドモの反対。家族の関係性を示すものではなく、自分である程度判断して行動できる、概ね中学生以上

 

※:回答率:「回答なし」を除く全回答に占める割合。例 「健康」の回答数/全回答数(回答なしを除く)

(ア)   巣篭り無関心

<クラスターの全体的な特徴>

各質問に対して全般的に反応が弱く、価値観質問30問における「そう思う」、「ややそう思う」の回答する平均は他のクラスターが44〜58%の間であるのに対し、わずか18%である。下表は価値観質問で本クラスターが最も反応が強かった上位5項目と最も反応が弱かった下位5項目である。数値は左から順に、該当クラスターの回答率、6クラスター中の最高値、最低値を記載した。特に、上位5項目の欄(赤枠内)にクラスターの特徴がよく表れている。【巣篭り無関心】では上位にあがっていても、他クラスターと比較すると最高値の約半分であり、最も反応が弱い。  

 

関心事からみる特徴を一言で表現すれば「無関心」である。「なし」回答率が他クラスターと比して非常に高く81.2%である。他クラスターは33%から48%の間で、全体平均は48.7%で全体平均を引き上げたのも本クラスターである。項目別には「健康」と「仕事」についての関心が平均より低く、「消費税・増税」「経済」「資産関連」などお金に対する関心が高い。

 

  

<性×年代からみる特徴>

クラスター内の男女の比率がほぼ半々のクラスターの一つである。しかし年代で見れば、20歳代、30歳代が全体の45.7%を、40歳代まで含めると68.2%を占め、若年層が多い。(赤枠内)男性で、その傾向が強く、最も構成人数が大きいのが30歳代男性である。未婚率が最も高く(「現在未婚」、「結婚経験なし」とも)、他クラスターと比較すると正規雇用率、世帯収入も6クラスター中2番目に低く、経済基盤が弱い。

  

<ライフステージからみる特徴>

LS別の特徴は、上記の性×年代別で表された「若年層(20〜39歳)」に加え、同居する子どもがいないということである。オトナだけの環境だからこそ、何事にも無関心であっても日々の生活はおくれるのかもしれない。ただし、他クラスターと比較すると正規雇用率、平均収入ともに低めである本クラスターにおいて、第4位に≪夫婦と子の世帯(共働き、末子が小学生以下)≫が入っていることを合わせて考えた場合、無関心だから反応が弱いのか、時間的、経済的に余裕が少ないから無関心なのかは判断しがたい。

   

 

(イ)   リアリスト

<クラスターの全体的な特徴>

本クラスターの特性は次の2点である。1点目は、各質問に対する反応が6クラスター中2番目に強いことである。(最も強いのは【外向き積極】後述)その違いは上位5項目と下位5項目の数値を両クラスターで比較すればわかるが、回答傾向にメリハリがあり、必要であると考える質問に対しては80%以上、そうでないものについては反応が10%を切るということである。例えばネットに関連する項目(体験型ゲームやネットのみでの人付き合いなど)への反応が弱い。2点目に、原発(『技術志向①』)や新技術の導入(『技術志向②』)などに対する反応の強さである。(赤枠内)特に、原発に対する回答の傾向は、後述の【エコライク】と正反対の様子を呈しており、全般的に現実的な回答が多いことから、【リアリスト】と名付けた。

  

 

関心事からみる特徴は、社会的なこと(「原発」「経済」「外交・世界情勢」)への興味の有無がグラフに現れ、反対に身近なことへはほぼ平均並みといえる。「経済」「外交・世界情勢」への関心が他と比べて非常に高く、反対に「原発(今回の調査では福島原子力発電所の事故処理関連の回答がほとんど)」への関心が他と比較すると薄い。

 

  

 

 

<性×年代からみる特徴>

男女別では年代別にはほぼ等分に存在しているが、実際には1.5対1で男性の方が多い。男性は40歳代以上の占める割合が55%と中高齢者の比率が高い。反対に女性ではほぼ等分である。平均収入は全クラスター中最も高く、経済的に安定していることも特徴の一つである。

 

 

<ライフステージからみる特徴>

本人が65歳以上、または孫のいる年代でかつ3世代同居の最年長世代の比率が高い(赤枠内)。高度経済成長期からバブル期にかけて働き、現在も共に住む家族があり、子どもがいるというのが上位2LSの共通項である。下位3LSと合わせると「結婚経験があり、子どもと共に住み、比較的経済的に余裕がある中年者以上」というあたりだろうか。

  

 

(ウ)   エコライク 

<クラスターの全体的な特徴>

「食べるものを手作りすることは大事だと思う」に90%以上が反応するなど『既製品派/手作り派』の手作り志向が大変に強く、『環境配慮行動』への理解も深い。次項で述べるが年代的に60歳代、70歳代という専業主婦が多く、家事に時間を割こうとすれば可能であり、半調理品など簡便食品が現在ほど一般的ではなかった世代の女性の意見が強く反映しているものと考えられる。上位5位項目中4項目が6クラスター中の最高値、下位5項目中5項目が6クラスター中の最低値であるこということは、【リアリスト】と同様に、反応にメリハリがあるとも言える。

  

 

関心事からみる特徴は比較的関心の高いもの「原発」、低いもの「政治」「外交・世界情勢」「オリンピック」「資産関連」となっており、どちらかといえば社会的なことについて興味の濃淡があるようである。「原発」は興味をもっている事柄であり、その他の興味が低いものは日々の自分の生活と直接に関わらないもののようだ。

 

 

<性×年代からみる特徴>

男女比が6クラスター中、1対1.75と最も女性の多いクラスターである。年齢別にみてみると男女とも20歳代がもっとも少なく、年齢が上がるにつれ増加している。また、年齢別では60歳代以上の高齢層が46.7%と6クラスター中最高で、既婚率(「現在既婚」、「結婚経験あり」とも)も最も高いクラスターである。

 

 

<ライフステージからみる特徴>

一言で表すと、「オトナばかり」のライフステージである。唯一、コドモのいるライフステージ≪夫婦と子の世帯(専業主婦、末子が中学生以上)(赤枠内)≫を除けば、ほぼ「同居世帯員の最年少者は40歳以上である」とでもいえそうなことが特徴である。

  

 

(エ)   付和雷同 

<クラスターの全体的な特徴>

文化・教養など知的好奇心に対して強く反応するのがこのクラスターの特徴であり、反応が強い上位5項目中3項目は知識、技術等に関する質問への積極的な傾向を示している。(青枠内)

  

 

関心事からみる特徴は一言でいえば、ほぼ平均並み、標準的である。関心事の結果は直前に流れる報道等の影響も受けやすく、最もニュースに敏感で多方面に関心を持っている。2つのグラフがほぼぴったり重なることがそのことを示し、とがったところのないことがこのクラスターの最大の特徴である。

 

 

<性×年代からみる特徴>

【エコライク】に次いで1対1.4と2番目に女性の多いクラスターである。【エコライク】と同様に高齢層の多いクラスターであり、若年層特に、男性20歳代、30歳代が少ないのも特徴である。(赤枠内)

 

 

<ライフステージからみる特徴>

性×年代別と同様に本人が40歳以上であり、最上位の≪3世代世帯(本人+親・子ども)≫(赤枠内)以外のLSは同居する子どももコドモもなく、大人だけのLSである。

  

 

(オ)   自己中心 

<クラスターの全体的な特徴>

「周りの人の幸せが自分の幸せだ」「他人のために自らが犠牲になることはやむをえない」という利他的な価値観について否定的な回答が他のクラスターと比較して非常に多い。また、「友人や仲間づくりには積極的な方だ」という交友に関する質問に対しても反応が弱い。(赤枠内)ここからうかがえることは、他人への興味が低いとも言える。後述のライフステージ別でみると≪単身世帯≫が多く、自分が思うように活動できる環境だからそうなったのか、自己中心的であるから、≪単身≫でいるのかはわからない。

   

 

関心事からみる特徴は高めが「資産関連」、低めが「経済」「子供」、その他は平均並みである。他のクラスターでは「資産関連」「経済」は同じ傾向であるが、本クラスターではそうではなく「資産関連」は自分ゴトなので関心が高く、「経済」はヒトゴトで遠いので低いのだろうか。また6クラスターの中で、唯一「子供」が平均から大きく下がっていることは【自己中心】らしさが表れていると言える。

 

 

<性×年代からみる特徴>

【巣篭り無関心】と同様に男女比はほぼ半々、6クラスター中最も小さなクラスターである。年代別にみると、70歳代以上がやや少なめであることを除けば男女別、年齢別の偏りが小さいことが特徴である。また、未婚率も【巣篭り無関心】に次いで高い。また世帯収入は6クラスター中最も低く、唯一500万円に満たず、【リアリスト】【外向き積極】とは100万円以上の差が存在する。

 

 

<ライフステージからみる特徴>

20歳から64歳までの若年、および中年層であり、同居するコドモがいないことが特徴である。1位の≪単身世帯≫と2位、3位の違いは家族の誰かと同居していることから、この特徴も【エコライク】よりやや若いが、やはりオトナばかりで暮らすライフステージである。

  

 

(カ)   外向き積極 

<クラスターの全体的な特徴>

このクラスターの特性は、各質問について他クラスターと比較すると反応が強い(赤枠内)ということであり、一言でいえば「どんな設問に対しても肯定する」といえる。例えば、「ネットだけでコミュニケーションをとることは十分可能」と「電話やネットだけでなく、人と会って話すことが大切」は行動様式としては反対の質問であるが、いずれも6クラスター中、最も高い。言い換えれば、「何らかの形で人と連絡を取ろう」と行動していることが表れているとするなら、積極的の表れともいえるのではないだろうか。

  

 

関心事からみる特徴は平均より高めが「仕事」「オリンピック」、低めが「原発」である。若年男性層が中心のクラスターなので歳を重ねるごとに増える「健康」が低めであるのは、納得できる。また「原発」が平均から低めのクラスターはこれ以外には【リアリスト】のみであり、これら2つのクラスターは『技術志向①』(原発)についても同様に肯定的であることを考えれば、両者には現実肯定という共通項があるといえる。6クラスター中最も高い「オリンピック」への関心は世界的なイベントを楽しみたい、関わりたいという積極さとしておこうか。

 

 

<性×年代からみる特徴>

1.5対1で男性が多い。年代別にみれば40歳代までの男性が特に多く、女性は年代による差が小さいクラスターである。【リアリスト】についで収入が高いクラスターである。

 

 

<ライフステージからみる特徴>

若年層の未婚(赤枠内)、または既婚でコドモありがライフステージから見られる特徴である。唯一、2位の≪ひとり親世帯(65歳以上)≫が高齢者を含むLSである。報道で見られるように団塊ジュニアをはじめシニア層の購買行動や旅行などが活発であるのなら、≪夫婦のみ世帯(65歳以上)≫が入っているのではと思っていたが、少々、想定外であった。

   

 

ここで、若年中心の2クラスターの関心事グラフを再掲する。

 

 

「仕事」の欄をみてみると他の4クラスターは全体とかわらないが、【巣篭り無関心】【外向き積極】の2クラスターが、一方は関心が低く、他方は関心が高い。それ以外には価値観設問への反応が最も弱いクラスターと最も強く全て肯定的に回答するクラスターと正反対の傾向を持っている。そのクラスターのいずれも、20歳代30歳代の若年男性層が多いクラスターである。二極化というのは様々な場面で使われている昨今のキーワードであるが、同じ若年層が価値観、行動パターンで2層に分かれているようである。

 

最後に各クラスターの説明の補助資料として使用していた世帯収入の算出方法と世帯収入平均を掲載する。本調査では、収入を「世帯収入」「個人収入」の2問行い、回答は右表の「回答選択肢」のいずれかを選ぶようにし、回答結果の右蘭の「算定」金額と回答者数で平均を算出した。なお「答えたくない・わからない」については計算の対象外とした。算定金額は選択肢のほぼ中央できりのよい数字とした。

  

その結果、その下段のクラスター別平均世帯収入である。最も高いのが【リアリスト】の591万円、最も低いのが【自己中心】の474万円と100万円以上の差がある結果となった。

  

 

平均収入は「世帯収入」「個人収入」のいずれを使用するかを検討した際には、行動は「家族単位」で決まっていくだろうという仮定と、LSという家族形態を問うた分析軸を採用しているという2点で「世帯収入」を分析の1指標として扱った。

 

4.      さいごに

今回のレポートでは新たに採用した「クラスター分析」の概要を述べた。2012年度のプレ調査時に試行し、以降、継続的に使用できるかを毎回確認したうえで分析軸として採用している。性×年代、ライフステージ、クラスターとした場合、クラスター以外の分析軸には性、年齢が関与しており、クラスターは本来その影響を受けにくいと考えていたが、実際にはクラスターによっては特定の性、年代が集中するものもあり、分析軸として万能であるものがないというのが現実である。「意識と行動」と銘打ったなかで「意識」そのものと「行動」を左右している価値観を数値化、見える化できるものの一つがクラスターである。今後も、この3つ分析軸で生活者を見ていく。

 

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