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情報誌CEL

久馬 一剛

2011年09月30日

土の科学と自然の循環

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2011年09月30日

久馬 一剛

エネルギー・環境

地球環境
その他

情報誌CEL (Vol.97)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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 中国の昔の人が、2千年も前に「人、非土不立(人間は土がなければ生きていけない)」といっているが、いま日本に住んでいる人のどれほどが、この言葉に共感しうるのだろうか。都会では一日に一度も土を踏むことなく過ごす人が圧倒的に多いと思われる。こういう人たちに、自分自身をも含め、陸地に生きているあらゆる生命の根源には「土」があるのですよ、といっても、なかなか実感してもらえないだろう。
 地球の陸地にある植物は、もとをただせばすべて、土から水や養分を吸い上げて生きている。そしてその植物に始まる食物連鎖の中で、微生物や原生生物のような小さな生きものから、各種の虫や草食性・肉食性のあらゆる動物も、果ては雑食性の人間まで生命を維持することができているのである。つまり地球陸地のすべての生きものを、根本のところで支えているのは土なのである。
 この働きに着目すると、土は地球陸地の生命を育むかけがえのない生産者ということになる。人間の営む農業は、土のこの生産者としての働きを自分の都合のよいように利用させてもらうことで成り立っている。いうなれば、人は自然という大家の長屋に住まわせてもらっている店子のひとりに過ぎないのであるが、いまはこの店子が大家の資産をわがもの顔で傷めつけ、同居している他の多くの店子(生きもの)たちの生存を危うくするまでにのさばってしまったように見える。
 生産者としての土の働きを支えているのは、土の中に棲む厖大な種類と数の小動物や原生生物、菌類、細菌たちである。植物が土の上で育つためには水や養分だけでなく、空気が必須である。植物の根は、人間と同じように、土の中に入ってくる空気を吸って炭水化物を燃やす呼吸をすることで、水や養分を吸い上げるためのエネルギーを獲得し、植物の生育を可能にする。この空気がどのように土の中に入るのかといえば、土の中にいろいろな大きさの隙間がある中で、大きな隙間から重力で水が抜けた後へ大気中から自然に入ってくる。砂地はよく水が抜けるので空気を入れるのには都合がよいが、他方で植物に必須な水をもちこたえることができない。逆に粘土質の土は、小さな隙間が多くて水もちはよいかも知れないが、こちらは空気が入りにくくて植物の根が呼吸困難になる。土の中でこの通気と保水という矛盾した働きの間のいいバランスをとっているのが団粒構造といわれるもので、ミミズの糞のようなものの集まりを思い描いてもらえばよい。大きな団粒と団粒の間からは水を抜いて空気を入れ、団粒内部の小さな隙間には水をもたせることができる。この団粒構造こそは、自然の中で土が獲得したまことにすばらしい装置なのであるが、これを作り出すのは、土に入る有機物とそれによって養われる無数の動物や微生物たちなのである。ミミズなどの動物の糞もあるが、カビや放線菌の菌糸が土の粒子を絡め上げ、細菌が出す粘い分泌物が粒子を貼り合わせるといった働きが、団粒構造を作り出している。