
岩槻 邦男
2010年03月26日作成年月日  | 
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                   2010年03月26日  | 
                岩槻 邦男  | 
                 エネルギー・環境  | 
                 地球環境  | 
                情報誌CEL (Vol.92)  | 
                
                
                
                
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 生物多様性という言葉が少しずつメディアにも取り上げられるようになっている。しかし、地球温暖化に比べて、まだまだ存在感が薄い言葉であり、2009(平成21)年6月に行われた内閣府の調査でも、この言葉の意味を知っていると答えた人は12.8%に留まっている。自分自身が生物多様性の要素のひとつで、生物多様性なしに物質面でも精神面でも生きていくことなどできはしないという事実を認識している人は指折り数えるほどしかいないのかもしれない。
 人は動物の一種である。だから、生物多様性を構成する要素のひとつである。生物多様性は人である自分から見て外側にあるのではなくて、自分自身がその中に含まれている実体なのである。それは、進化の歴史を経て人となった、動物としての自分の位置をいうだけでなく、文化を構築する背景にも生物多様性は強い影響を及ぼしている。
 生物多様性との取り組みとは、人が生物多様性と名付ける対象をどうこうしようという話ではない、自分自身の生をどのように展開しようかという課題である。自分の生存のこととなると目の色が変わる人の多いことを考えれば、生物多様性の生こそ自分自身の生であるという事実に気づこうと示唆する言葉でこの小文を始めることにしたい。
情報誌CEL