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弘本 由香里

2001年11月16日

毎日新聞夕刊コラム「風の響き」(2)

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2001年11月16日

弘本 由香里

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アフガニスタンでは、戦争のある日常しか知らない子どもたちが生まれ育っているという。

戦争を生身で体験したことのない私だが、もの心ついて以来、父の存在に戦争の影を感じて育った。父の父親は、広島に原爆が投下された朝、通勤途上の爆心地で亡くなっている(らしい)。遺体は発見されていない。少年だった父は父親を探し、広島の町を訪ね、さまよい歩いた。

爆心地の光景が父の原風景だった。証のように、人生が終わる直前に、その原体験を書き残して逝った。少年の心は、64年の生涯を終える最期の時まで焼け野原をさまよい続けていた。その重さに、私は年を経るごと、思い至る。

3年前のことだが、文化戦略を都市経営のコンセプトに掲げるオーストラリアのメルボルンを訪ねた際、思いがけず「戦争と人生」にかかわる印象深いプロジェクトに出会った。高齢者施設でのメンタルなリハビリテーションプログラムの一つで、高齢期を迎えた第二次世界大戦の復員兵士と戦争で夫に先立たれた妻たちが対象だった。

戦争が人生に落とした影、罪悪感や喪失感。多くの高齢者の心をさいなんでいる戦争の傷を含め、彼らがその人生全体を語り、共有していくこと。それが、生きる希望の回復を支える、リハビリテーションに不可欠との認識のもと、回想録を共同でつくるという表現作業が行われていた。

人生を絶ち切って容赦ない戦争に対して、人生の連続性・全体性を回復し、社会と個人のつながりを再生し、生きる尊厳を取り戻すリハビリテーションは、戦後半世紀を経てなお必要とされているのである。

アフガニスタンでは、戦争のある日常しか知らない子どもたちが生まれ育っているという。

戦争を生身で体験したことのない私だが、もの心ついて以来、父の存在に戦争の影を感じて育った。父の父親は、広島に原爆が投下された朝、通勤途上の爆心地で亡くなっている(らしい)。遺体は発見されていない。少年だった父は父親を探し、広島の町を訪ね、さまよい歩いた。

爆心地の光景が父の原風景だった。証のように、人生が終わる直前に、その原体験を書き残して逝った。少年の心は、64年の生涯を終える最期の時まで焼け野原をさまよい続けていた。その重さに、私は年を経るごと、思い至る。

3年前のことだが、文化戦略を都市経営のコンセプトに掲げるオーストラリアのメルボルンを訪ねた際、思いがけず「戦争と人生」にかかわる印象深いプロジェクトに出会った。高齢者施設でのメンタルなリハビリテーションプログラムの一つで、高齢期を迎えた第二次世界大戦の復員兵士と戦争で夫に先立たれた妻たちが対象だった。

戦争が人生に落とした影、罪悪感や喪失感。多くの高齢者の心をさいなんでいる戦争の傷を含め、彼らがその人生全体を語り、共有していくこと。それが、生きる希望の回復を支える、リハビリテーションに不可欠との認識のもと、回想録を共同でつくるという表現作業が行われていた。

人生を絶ち切って容赦ない戦争に対して、人生の連続性・全体性を回復し、社会と個人のつながりを再生し、生きる尊厳を取り戻すリハビリテーションは、戦後半世紀を経てなお必要とされているのである。アフガニスタンでは、戦争のある日常しか知らない子どもたちが生まれ育っているという。

戦争を生身で体験したことのない私だが、もの心ついて以来、父の存在に戦争の影を感じて育った。父の父親は、広島に原爆が投下された朝、通勤途上の爆心地で亡くなっている(らしい)。遺体は発見されていない。少年だった父は父親を探し、広島の町を訪ね、さまよい歩いた。

爆心地の光景が父の原風景だった。証のように、人生が終わる直前に、その原体験を書き残して逝った。少年の心は、64年の生涯を終える最期の時まで焼け野原をさまよい続けていた。その重さに、私は年を経るごと、思い至る。

3年前のことだが、文化戦略を都市経営のコンセプトに掲げるオーストラリアのメルボルンを訪ねた際、思いがけず「戦争と人生」にかかわる印象深いプロジェクトに出会った。高齢者施設でのメンタルなリハビリテーションプログラムの一つで、高齢期を迎えた第二次世界大戦の復員兵士と戦争で夫に先立たれた妻たちが対象だった。

戦争が人生に落とした影、罪悪感や喪失感。多くの高齢者の心をさいなんでいる戦争の傷を含め、彼らがその人生全体を語り、共有していくこと。それが、生きる希望の回復を支える、リハビリテーションに不可欠との認識のもと、回想録を共同でつくるという表現作業が行われていた。

人生を絶ち切って容赦ない戦争に対して、人生の連続性・全体性を回復し、社会と個人のつながりを再生し、生きる尊厳を取り戻すリハビリテーションは、戦後半世紀を経てなお必要とされているのである。

 

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