
豊田 尚吾
                 
                
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                   2005年04月01日  | 
                
                    豊田 尚吾
                    
                    
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                 住まい・生活  | 
                 消費生活  | 
                新聞・雑誌・書籍  | 
                
                
                
                (財)統計情報研究開発センター「ESTRELA」2005年4月(No.133)所収  | 
              
1. はじめに
前回までは、様々な統計処理方法が、生活向上にも役立つのではないかという観点で論じ、主にマーケティングで利用されている手法を取り上げてきた。ほかにも、経済学の分野で用いられている回帰分析や時系列分析、産業連関分析、パネル分析など、活用可能な分析手法はまだある。しかし、連載も9回を迎え、今回からは手法よりも、生活者が抱える課題を論じることに重点を置く。できるだけ具体的な調査データを用いて、考察を行うこととしたい。本連載の基本的な問題意識として、繰り返し述べてきたのは、生活者を取り巻く環境が変化し、リスクや不確実性が増しているということである。身近な話題を振り返っても、昨年は振り込め詐欺、今年はフィッシング詐欺(偽のメールやサイトを利用して、銀行の暗証番号などを聞き出す手口)などという言葉が作られたことが示すように、新手の詐欺事件が社会問題となった。従来のクレジットカードの盗用が、昨年あたりから銀行のキャッシュカード偽造へと変わりつつあり、一層身近な生活上の脅威となっている。偽造紙幣という犯罪も、ITの利用によって、他人事ではなくなっている。
そこで今回は、より広く、消費生活の中で遭遇するような、身近なリスクとどのように
付き合っていくのかということに焦点を当てて論じてみたい。以下、第2節では、リスクと意思決定に関する基礎理論について概観する。第3節は、リスクを伴う意思決定における、確実性効果について述べ、第4節で、繰り返し選択下での判断を、アンケート調査のデータを用いて、検討する。最後に、一度だけの選択機会が生活の中でどのような意味を持つのかについて考察する。結論として、経済的な意味での合理性は、生活の文脈の中で必ずしも重視される必然性はない。今後、生活のニーズに応じた決定論(戦略)がもっと論じられるべきだということを主張する。
情報誌CEL