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情報誌CEL

河瀬 隆

2004年09月30日

FROM EDITOR

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2004年09月30日

河瀬 隆

住まい・生活

地域ガバナンス

情報誌CEL (Vol.70)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

 「地球環境問題」という言葉を聞いた瞬間、何か「重苦しいもの」を感じてしまう。地球環境の破壊が現代社会の副産物であるのは間違いない。したがって、それを問題にすることは、ある意味で、我々の、今の「暮らし」や「生き方」を否定することでもあり、何となくやるせない気もする。しかし、今こそ一人ひとりが、二一世紀における持続可能な社会のことを考えて、「今のライフスタイルや価値観を変えなければならない」とも思う。では一体、「それをどうやって、どこまで変えればよいのか」と考えだすと、今度は自分の中に、「アンビバレント(両面価値的)」なものを感じてしまい、途端に自信がなくなるのである。

 そして、もっと厄介なのは、この間題が政治問題的(いや、まさに政治問題の)側面をもつことだ。養老孟司氏もその著書(『いちばん大事なこと』)で指摘するように、例えば、いくら我々が、毎日の生活の中で省エネを心がけ、ゴミを減らし、仮に日本の二酸化炭素排出量を一〇パーセント減少させても、日本の一〇倍の人口を擁する中国の全国民が、今より多くの化石燃料を使用して、二酸化炭素排出量を一パーセント増やしたら、日本の努力は、短期的には相殺されてしまうことになる。だからといって、エネルギー多消費の恩恵を享受する我々が、中国国民のエネルギー消費を拒むことはもちろんできない。そこには、個人の努力の範囲をはるかに超えた、極めて政治的な国際間の調整事項が存在する。

 しかし、今や(今まで散々言われ続けてきたことであるが)我々は、この問題から逃げることはできない。松井孝典氏は「人間は生存を維持するために自然を利用し、改変し、破壊してきた。しかし一方で、自然とは何かということに、絶えず目を向けてきたのも人間である」(『地球・四六億年の孤独』)と述べているが、まさにそのはずだった。ならば、今の現実はその必然的結果にすぎないのか。地球が今、人間の存在を試しているのか。

 「地球環境の危機が深刻になったのはここ半世紀。たかだかこの半世紀で、地球を危ない状態に追い込んだその時代に生きた人間の責任は大きい。便利さ、快適さ、スピードを求める人間の欲望は無限ですから、どこかで歯止をかけないと。それには『人間とは何か?』ということから考えなければ解決できないかもしれませんね」。海の砂漠化を防ぐため、自らも植林活動に取り組む松永勝彦氏はこう語る(『漁師が山に木を植える理由』)。

 今、二一世紀における我々の生き方が問われているのは間違いない。それは、まるで地球が我々に発する「人間の存在理由そのもの」についての問いのようでもある。

 「CEL」今季号は、生活者の視点から「エコライフ」を捉えることを特集した。自らの生き方として、また価値観の発露としてこの問題に取り組む姿が新鮮だった。そこには「便利さ、快適さ、スピード」だけではない、別の「新しい豊かさ」があることに気付される。「大量生産―大量消費―大量廃棄」を前提としたこの社会のシステムは、少しずつ変わろうとしている。しかし今、本当に必要なのは、「変わる」のを待つ姿勢ではなく、「変える」という自分自身の生き方としての、一人ひとりの行動なのではないだろうか。――河瀬 隆

 

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