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情報誌CEL

河瀬 隆

2004年12月25日

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2004年12月25日

河瀬 隆

住まい・生活

その他

情報誌CEL (Vol.71)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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 もう二五年以上前になるが、井戸掘りのワークキャンパーとしてネパールに行ったことがある。当時ネパールでは、衛生的な水の確保が難しい状況にあり、多くの人々が健康を害する現実があった。そのような状況から、現地で一○年以上も医療活動を続けていた医師・岩村昇博士の提唱により、衛生的な水の確保のために現地の人たちと一緒になって井戸掘りをしようという趣旨で、学生を中心に、毎年ワークキャンプ隊が編成されていたのである。

 私が参加した年は一〇名ほどのメンバーで、現地で二班に分かれ、それぞれが首都カトマンズからバスと徒歩で数日かけて二か所の山村に入っていった。それらの山村はもともと水事情の悪いところであったが、あらかじめ地形とか地質の調査がなされ、井戸掘りの可能な地点が見定められていたのである。だが、水が出るかどうかは、やってみないと分からない。

 民家に滞在させてもらい、数週間の予定で井戸掘りが始まった。ツルハシとシャベルを使い、全くの手作業で、毎日毎日、井戸を掘り続ける。私たちの作業を見物しようと、周辺の村落からも沢山の人たちがやって来る。最初は「変な日本人が来て、アホなことを始めたぞ」とばかりに、穴の上から中を覗き込んでいた人たちも、そのうち、一人、二人と作業に加わり、ついに「国際共同プロジェクト」が始まる。そうなると、ヤワな我々よりも、作業スキルは彼らの方が圧倒的に上で、穴はどんどん深くなっていく。

 そして、ついにその日が来た。神さまはなんとドラマチックな演出がお好きなことだろう。休日で我々が村を離れていたその日、村の人たちだけで作業を続けていたその時に、とうとう待望の水が湧き出たのであった。あの日のみんなの喜びようと誇らしげな姿は忘れられない。自らの手で自らの水脈を掘り当てたのだ。

 その後、村の人たちがその井戸をどう使い、さらなる「水脈」の広がりのために、それをどう活かしたか。実は、それが一番大切なことだった。うまくいけば、あの村の女性や子供たちが、毎日毎日、数キロも離れた川まで水を汲みに行っていた大変さも、少しは緩和したに違いない。

 しかし、最近のネパールの「水事情」を聞くと、当時とあまり変わっていないようである。首都カトマンズでも、水の供給状況や衛生状態は依然としてよくないし、まして都市部から一歩入った多くの山村の現実には厳しいものがある。今でもネパールの人々は不衛生な水で健康を害し、幼い子供たちは大切な命を失っている。

 ひるがえって、我々は恵まれた日常の中にあって、一見豊かな水資源を当たり前と思っている。国により、地域により、人々と水との関わり方に違いがあるのは当然だろう。だが、今もって変わらない「かの国(それはネパールだけではない)の現実」には、暗然とした気持ちになる。「水」の問題を考える時、南北格差の複雑な問題の中で、今なお取り残された「最低限の生活のための水」の問題を忘れてはならない。

 あの小さなネパール体験。それは、悩み多い日本の若者に生きることの本当の意味を教える多くのことを含んでいた。だが、その「水脈」を、単に自分自身の「貴重な体験」に留めてしまい、より深く掘り進まなかったのではなかったか。今にして、ふと、そんなことを考えている。 ――河瀬 隆

 

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