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2026年04月17日 by 山納 洋

【シリーズ】街角をゆく Vol.20 高取山(神戸市長田区)


こんにちは。エネルギー・文化研究所の山納洋(やまのう・ひろし)です。

私は「Walkin'About」という、参加者の方々に自由にまちを歩いていただき、その後に見聞を共有するまちあるき企画を続けています。目的は「まちのリサーチ」。そこがどういう街なのか、どんな歴史があり、今はどんな状態で、これからどうなりそうかを、まちを歩きながら、まちの人に話を聞きながら探っています。

この連載ではWalkin'Aboutを通じて見えてきた、関西のさまざまな地域のストーリーを紹介しつつ、地域の魅力を活かしたまちのデザインについて考えていきます。

今日ご紹介するのは、高取山(神戸市長田区)。神戸高速線「高速長田」駅、神戸市営地下鉄「長田」駅から登山口までは徒歩20分ほど、山頂までは1時間ほどで行けます。


高取山は古くは「神撫山(かんなでやま)」と呼ばれ、古来より神が降臨する聖なる山として敬われてきました。山頂近くにある高取神社の社伝によると、神功皇后がこの山を神奈備の霊地と定め、武甕槌尊(たけみかつちのみこと)を祀ったのが始まりとされています。創建は神功皇后元年(201年)。江戸時代になると山中のあちこちに祠や石碑が設けられ、信仰の山としての性格が強まりました。


高取山遠景


高取山のあちこちに残されている石碑


神戸には「毎日登山」という文化があります。始まったのは明治後期で、始めたのは神戸に在留していた外国人たちです。彼らが六甲山系の山にある茶屋まで毎日上がってくるようになり、茶屋には登山者用のサイン帳が置かれ、登山仲間の社交場として賑わいました。この習慣が神戸市民にも受け継がれ、大正時代には登山会が発足し、毎日登山が始まりました。

高取山のいちばん上にある月見茶屋は1923(大正12)年に創業しています。高取山には最盛期には10軒の茶屋があり、毎日登山の拠点ともなっていました。現在は月見茶屋、安井茶屋、中の茶屋、清水茶屋の4軒の茶屋が営業を続けています。


月見茶屋(2012年撮影)


中の茶屋


戦後のまだ娯楽が少なかった時代には、高取山は港にある工場で働く人たちの娯楽場として栄えました。茶屋には卓球場や弓道場、投輪場(とうりんじょう)、謡曲稽古場などが併設されています。投輪というのは「輪投げ」のことで、神戸ではスポーツとして定着しています。もともとは神戸港に入港する外国船の船員たちが、船上で運動不足を解消するために楽しんでいたものが、大正時代に造船所など、港に関係の深い職場の人たちに伝わったと言われています。彼らは自分たちで鉄板を溶接して的を作り、ゴムを加工して輪を作り、的から8.5m離れたところから輪を投げて点数を競うというスポーツとして独自開発したのです。投輪もまた、港町神戸にやって来た外国人によって伝えられ、神戸に定着した文化なのです。


僕も10数年前、高取山に通って茶屋で投輪を習っていたことがあります。当時は「投輪名人」と呼ばれる植松計邑(うえまつ・かずくに)さんという方がおられ、スナイパーのように1本1本の輪を次々に的棒に入れて高得点を上げておられました。


また高取山は、神戸市が主催する「六甲全山縦走大会」のコースにもなっていて、多くの健脚登山家が訪れる山にもなっています。


植松さんによる投輪指導風景(2014年撮影)


神戸の毎日登山には、最盛期の昭和初期には1万人ほど参加されていたそうですが、近年は1500人まで減少しています。高取山では、多くの方は早朝のラジオ体操の時間に来られ、その後に茶屋に寄ってから帰られるのですが、それ以降の時間帯に山に登る方が少ないため、茶屋の営業も午前中だけというところが多くなっています。またコロナ禍があったことで、高取山では投輪がほとんど行われなくなっています。さらに茶屋の経営者の高齢化も進んできています。


月見茶屋の前店主は1995年から営業を続けてきましたが、2023年に閉店されました。その後神戸ツキワ登山会の方がお店を開けておられましたが、今年3月から岡田さんという方が後を継いで営業を始められました。普段は飲食店(カフェ)で働いておられる方で、月見茶屋は土日祝の午前6時半からお昼まで開けているそうです。


月見茶屋(20263月撮影)


また「高取応援プロジェクト」という動きも始まっています。中心となっているのは、神戸市灘区の一王山(いちのうさん)十善寺で2020年から「カミカ茶寮」という茶屋を営んでおられる豊永さんです。一王山は神戸大学キャンパスのすぐそばにあり、ここでも毎日登山が行われています。

豊永さんは以前から六甲山系に点在する茶屋文化がこのままでは失われてしまうのでは、との危機感を抱いておられ、茶屋の活性化のために、茶屋同士がつながる活動や、山の茶屋や毎日登山の文化を未来へつなぐ取り組みを模索してきました。

そうした中で始まったのが「高取応援プロジェクト」です。今年に入ってからは清水茶屋の一部を借りて、かつて清水茶屋の名物だったドーナツの復活に取り組むとともに、オリジナルグッズの販売を行い、その売上の一部を茶屋に還元する活動も行っておられます。


高取山の茶屋は、これまでも経営者が代替わりしたり、交替したりしながら今まで続いてきました。毎日登山や投輪といった、神戸が港町だったからこそ根付いている文化を守るためにも、新たな店主や活動の担い手が求められています。


神戸市では2024年から「神戸登山プロジェクト 神戸の山へ出かけよう」と題したスタンプラリーを開催し、六甲山系にある茶屋を紹介しています。また長田区役所では、20年以上前から継続してきた「高取山スタンプハイク」を、今年(2、3月)から「高取山プレイパーク」と改め、登山だけでなくカフェ営業や山ヨガ、卓球、音楽ライブなどの催しを交えて2日間開催。2000名近い方が参加されたそうです。昨年度の神戸市のスタンプラリーのマップには「月見茶屋オーナー募集」の記事が載っているのですが、その記事のおかげで岡田さんが新たなオーナーに決まったのだそうです。


「高取山プレイパーク」チラシビジュアル


そんなお話をうかがったので、僕の方でも1つ企画を立ててみました。それは「高取山投輪練習会」です。

来る5月17日(日)に、高取山の清水茶屋にある投輪場で開催します。当日は朝9時半に神戸高速長田駅西改札に集合いただき、そこから30分ほど歩いて清水茶屋まで上がり、そこで投輪の練習をしたり、みんなで食事をしたりします。参加料は200円(投輪場の使用料)です。この機会に、高取山に足を運んでいただき、投輪を体験いただければと思っています。お問い合わせは「六甲山カフェプロジェクト info@talkin-about.com」まで。


神戸市長田区主催「長田おやこdeわくワーク」での投輪体験(2025.11.2開催)@清水茶屋投輪場

*写真提供:長田区役所



※【シリーズ】街角をゆくは、不定期で連載いたします。

 

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