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季刊誌CEL

坂口 可奈

2018年11月01日

シンガポールの教育制度から日本は何を学べるか

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2018年11月01日

坂口 可奈

住まい・生活
都市・コミュニティ

ライフスタイル
地域活性化

情報誌CEL (Vol.120)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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シンガポールの高い教育水準は広く知られている。その一方で、行き過ぎたエリート教育だと問題視されることもある。建国から50年という短期間に世界屈指の教育水準を誇るまでに急成長を遂げたシンガポールの教育制度の歴史をひもとき、さらにそこから見えてくる優位性や問題点から日本が学ぶべき道を探る。


はじめに

シンガポールの教育水準は世界から非常に高い評価を受けている。2015年のPISA(OECD生徒の学習到達度調査)では数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解のすべての分野における得点の中央値が世界第1位であった[*1]。このような高い順位の背景には、教育に対する政府の考え方や教育制度それ自体がある。本論考では、シンガポールの教育制度を紹介したのちに、日本がシンガポールから何を学べるかについて考えてみたい。


国家建設と教育

シンガポールの教育制度は、国家の生き残りという目的のもとで、社会経済状況に応じて変化を遂げてきた。建国初期のシンガポールで主に必要とされていた人材は、工場などで働く単純労働力であった。そのために、基礎的な技術を持ち、読み書きができる人々を育成する必要があった。それゆえ、この時期には識字率向上と国民全員への普通教育が重視された[*2]。その後、教育改革を経て、より細かなストリーム制が導入される。これは、より個々人の学習速度や理解度にあった教育によって中退を減らすことを目的としたものであった。この時代までのシンガポールの教育は知識詰め込み型だった。

1990年代になると、シンガポールは知識ベース経済に対応した人材を育成する必要がでてきた。知識ベース経済では、ただ詰め込まれた知識ではなく、応用力や主体性が必要になる。そこで、シンガポールの教育は「考える学校、学ぶ国民」をスローガンとして、応用力や主体性を養う形の教育にシフトした[*3]。しかしながら、この時期の教育も経済発展のための「人材」を育てているに過ぎなかった。学校のカリキュラム中心に子どもたちは学習を続け、テストの結果によって評価された。応用力や主体性を重視するという名目ではあるが、実際は形を変えた詰め込み教育だった。

そして現在では学力だけでなくより多様な能力を評価しようという試みがはじまっている。これは、シンガポール政府が学業成績だけで生徒たちを評価する方針をやめたことを意味している。