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2018年04月11日 by 加茂 みどり

これからの住まいを考える(2) ―風の抜ける家―外とつながる暮らし


日本の気候と風通し

吉田兼好『徒然草』第五十五段冒頭の「家の作りやうは、夏をむねとすべし」は、有名な一節です。日本では、寒い冬よりも、湿気の高い夏をどのように快適に過ごすかが大切で、風通しが欠かせない。

「冬はいかなる所にも住まる」という兼好の言葉にも、日本らしさを感じます。四季があり、温暖だからこそ、冬はどんなところでも住める。

日本よりもずっと寒さが厳しい欧州などでは、冬に凍死しないことの方が大切ですから、壁を厚くして開口部を小さくし、外の寒さから内部を隔離しようとするのでしょう。そのような国では、ちょっと風を感じるだけで、「不快」だという場合もあるようです。そのような国々と比べると、家に風を通し、暑いも寒いもしなやかに乗り越えて、四季を感じ楽しむ住み方は、温暖な気候の地だからこそです。外とつながる暮らしの心地よさを大切にする住まいは、日本的、和風の居住文化だと言えるのかもしれません。


風を通す工夫

風を通すための建具にも、日本には様々なものがあります。日本最古の建築物、法隆寺金堂には、すでに連子窓(れんじまど)があります。平安時代、寝殿造りの邸宅には、格子や蔀(しとみ)戸が使われました。平安時代後期には、引違いの格子戸が広まり、扉を開け放して格子戸を閉じることで、人の侵入を許さず光と風を取り入れていたそうです*1。無双窓(むそうまど)も、風を通すために多く用いられてきました。

実験集合住宅NEXT21のリフォームでも、風を通すための建具を取り入れたことがあります。大阪格子です。普通の障子戸のように見えるのですが、障子の紙の部分(小障子)を取り外すと格子戸となり、夏場は風を通せるようになっています。


 

              法隆寺金堂 連子窓(出典:参考文献1*1)  


                                            蔀(しとみ)戸(出典:参考文献2 *2


 

平等院鳳凰堂 格子遣戸(出典:参考文献1*1


               無双窓(出典:参考文献3*3 


 「中京・風の舎(ナカギョウ・カゼノヤ)(設計:三澤文子(Ms建築設計事務所)+加茂みどり、施工:(株)夏見工務店)の計画では、まず風の抜ける家にすることを考え、摺り上げ下げ障子を使いました。いわゆる雪見障子ですが、本来の雪見障子は、摺り上げ、または摺り下げて開いた部分にガラスが入っているもので、ガラスのないものは、猫間障子(猫の通り抜けを考慮した障子)というそうです。

 玄関扉を開けると、間口一杯の土間になっていますが、そこから、三本の風の道が、住戸内をベランダ側まで通ります。土間から室内側に入る部分に摺り上げ下げ障子を使うことで視線を防ぎつつ、窓を全開にして風を通せるようにしました。また玄関部分は扉のすぐ内側に、鍵付きの摺り上げ下げ障子を使い、扉を開け放てるようにしています。



    


 風の道をつくるためのもう一つの工夫は、個室を続き間としたことです。狭いマンションの一室に、独立した個室をいくつか作ると、風の道は通りません。そこで、寝室や書斎をつなげて連続した空間とし、必要に応じて引き戸で仕切る続き間とし、風の道と重ねました。たしかに、欧米の住宅では考えられないでしょうし、独立した個室は、日本の住宅の近代化の特徴の一つです。しかし続き間があることで、「中京・風の舎」は、本当によく風の抜ける家となっています。


  


縁側空間の実現

 「中京・風の舎」では、ベランダを板敷とし、改修前は土足空間であったところを上足空間として、縁側と見立てています。床が室内の板敷から縁側の板敷に連続することと、靴の履き替えがないことで、リビングと行き来しやすく、縁側が身近になります。普段の生活の中で、季節の良い時に縁側での生活を楽しむことはもちろん、少しの暑さや寒さも季節感として楽しむ。集合住宅に住む誰もが、かつては日本人が普通にしていた、そんな生活ができたらいいなと思います。

(エネルギー・文化研究所 主席研究員 加茂みどり)




コラム「これからの住まいを考える」は、こちらからご覧ください。

(1)「中京・風の舎(ナカギョウ・カゼノヤ)」が竣工しました 

http://www.og-cel.jp/column/1268771_15959.html

(3)ウチであり、ソトでもあり ―領域の重なるところ

http://www.og-cel.jp/column/1271032_15959.html

(4)ウチであり、ソトでもあり2 ―縁側のある暮らし

http://www.og-cel.jp/column/1274026_15959.html

 

*1 参考文献1:高橋康夫「物語 ものの建築史 建具のはなし」鹿島出版会、 1985

*2 参考文献2:平井聖「図説日本住宅の歴史」学芸出版社、1980

*3 参考文献3:清家清監修「すまいの歳時記―伝承の暮らしとしつらい―」講談社、1985

*4 建具のいろいろ:参考文献3 P252253