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情報誌CEL

中上 紀

2018年07月01日

自然の物語に導かれて

作成年月日

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備考

2018年07月01日

中上 紀

都市・コミュニティ

コミュニティ・デザイン
地域活性化

情報誌CEL (Vol.119)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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亡父の故郷が和歌山であるため、子供の頃から彼の地の海や川、山などの自然に親しんできた。いま、自然から生まれた伝説や伝承に、心を寄せている。
例えば、日高町の「道成寺」に伝わる二つの伝説。一つは、藤原宮子の物語。一説に彼女はかつて海女の娘で、なぜか髪が生えなかったという。だがある時母親が海の中から光り輝く観音像を拾い上げて以来、髪が伸びはじめ、ついに身の丈よりも長くなった。やがて旅の途中の文武天皇に見初められ、藤原不比等の養女となって入内に至ったという「髪長姫」の伝説が信じられている。もう一つの伝説は、有名な「安珍清姫」だ。清姫が大蛇と化し、安珍を追いかける情念の強さは恐ろしいほどである。両方の伝説の舞台となる紀州の自然、川や海も、決して平たんではなく、激しい。そして美しい。強い女性そのものである。
さて、清姫は恋の炎で安珍を焼き殺したが、火といえば、新宮の御燈祭りが思い出される。
新宮は、亡父の生まれ育った町である。年に何度か、家族全員引き連れて、新宮の祖父母の家に行き、長々と滞在するのが常だった。2月6日の御燈祭りに、父が幼い弟を伴って上った時のことも覚えている。
1400年続く御燈祭りの舞台となるのは、神倉神社が祀られている神倉山だ。この山の中腹に、カエルが伏せたような形に見えることからゴトビキ岩と呼ばれる岩がある。祭りの日、白装束に身を包んだ2000人もの男性が、538段の石段を上り、この岩の周りに集まる。皆、手には松明を持っており、そこにご神火をいただいて、開門の合図とともに、山を駆け下りる。祭りの期間中、山は女人禁制だ。山の神様は女で、この祭り自体が、男女の契りだからである。ただ、女たちは白装束を纏った男たちの食事や振る舞い酒の準備をし、さらには、山から下りてくる男たちを、麓で待ち受ける。男と女、双方がいて成り立つ祭りなのである。
ところで、祭りでは、古来の鍛冶職が鉞を奉納する。これは神武天皇が地形の荒々しい紀伊半島に分け入り、高倉下の命の援助により布都御魂剣を手に入れ、大熊あるいは毒気を吐いて抵抗する女酋長「ニシキトベ」を倒したとされる伝説によるものだ。神倉山で、男神は鉄を以て母系社会を制することで、男系中央集権社会の祖を築いた。そのバランスのために鉄の源である火を祀っているとも映る。