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情報誌CEL

京 雅也

2011年09月30日

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2011年09月30日

京 雅也

住まい・生活

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情報誌CEL (Vol.97)

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 以前、博物館で縄文の火焔土器や土偶を見たことがある。それらは、土で作られて焼かれたもの。太古の人たちは、こうしたものを、どんな思いをこめて作ったのだろうか。もちろん、現代人の私には分からない。ただ、その燃え立つような形状や大胆な表現からは、大地と生命の根源性のようなものが伝わってくる。
 現代の社会では、土に関わるこうした精神性は、かなり希薄になっているのは確かだろう。それでも、まだそのすべてが失われてはいないことにも気がつく。例えば、子どもにとって土は宝の山だ。地面を掘るといろんなものが出てくる。草の根っこや木片、びた釘に色ガラスのかけら、それにミミズやダンゴムシ。大人から見るとガラクタのようなものでも、子どもには大切な宝。子どもは本能的に土を掘り、泥だんごを丸める。
 小学生の頃、私もザリガニ捕りに夢中で、平気で泥の中に入っていたことを思い出す。夏になると近所の川で、友だちと一緒にナマズを捕った。手分けをして水に入り、ナマズを浅瀬に追い込んでから網ですくった。無我夢中で、どの子も泥だらけ。当時はそのまま家に帰ったが、親にさほど怒られることはなかった。家の表で裸になって水を被り、着替えて縁側でまた遊んだ。
 今はどうだろうか。マンションだと泥だらけのまま屋内に入るときっと大目玉。洗濯も大変だし、室内にも泥が飛ぶ。いつの頃からか、土や泥はただ汚くて不衛生なものになってしまった。現在では、住まいの周りに以前ほど土はない。土間も縁側もなく、家の内と外がはっきり分かれている。
 「節電」が合い言葉だった今年の夏、多くの家庭では、クーラーをなるべく使わず、窓を開けて風を通す暮らしが見直された。これを機に、緑のカーテンづくりに励んだ人もいただろう。近年はベランダや路地で花木を育てるだけでなく、コンテナなどで野菜作りをする人も増えている。土いじりや緑に接することで幸せな気持ちや喜びを感じる人はきっと多い。なかには、土や緑を介した近所付き合いから、交流の輪を広げる人もいることだろう。
 都会の中でも、雨の降り始めに、ほのかに土のにおいが漂ってくると、心が少しなごむような気がする。夏には土から出てきたセミがなき、秋には虫の音が聞こえる。土のある暮らしというのは、生命の存在を身近に感じながら日々を生きるということでもあるようだ。

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