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弘本 由香里

2001年10月12日

毎日新聞夕刊コラム「風の響き」

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2001年10月12日

弘本 由香里

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5名によるリレーエッセイ

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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ぱんっ、ぱんっと柏手(かしわで)を打つ音が耳に届き、私の眠りを覚ました。9月中旬の一日、新潟県村上市の観音寺で迎えた朝のことである。

真言宗・観音寺という名が示すとおり、ここはお寺である。けれど、ご本尊への挨拶は柏手で始まる。神仏習合の由緒からすれば、自然なことなのかもしれないけれど。

同行の姉は、学生時代に民俗調査で世話になって以来の縁で、年に一度は「ただいま」と、当寺を訪ねている。ご本尊への柏手を珍しがる私に、「現世利益、生きている人の幸せを祈るため、柏手を打つんだよ」という。

考えてみれば、命あるものは、たくさんの音を連れて存在している。心臓の音、呼吸の音、泣き声・笑い声、足音…。鳥の声、虫の声…。

「音連れ=訪れ」とすると、観音寺に響く柏手は、一日一日、繰り返し繰り返し、命の訪れを喜び喜び、打ち続けられてきたのではないかと。そんなふうに聞こえてくる。

ちょうどその日、村上市内の商店街では、「町屋の屏風まつり」が繰り広げられていた。64戸もの商家や民家が、長らく蔵に眠ったままだった古い屏風や祝いの諸道具を持ち出して、座敷に飾った。もちろん、道行く人は誰でも気軽にのぞいて観ることができる。

昨春・今春には、同じく蔵に眠ったままの雛人形や武者人形を飾る「町屋の人形さま巡り」も開催されたという。

人形や屏風が息を吹き返すと同時に、町も息を吹き返したかのように見えた。私のような旅人も町の住民も、座敷に並ぶ品々を前に「ほーっ、これはまた…」と語り合う。町中にそんな声が溢れている。忘れられた物語が再び沸き立っていく様を目の当たりにするようだった。

賑いもまた、たくさんの命の音連れなんだと実感。これは確かに現世利益である。

 

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