
小西 久美子
2026年05月19日大阪くらしの今昔館から「お出かけ」してきた上町台地ゆかりの館蔵品を、専門家の解説のもと鑑賞した後、
実際のまちを歩いて探求し、最後に参加者どうしで気付きを共有する「お出かけ今昔館」。
大阪暮らしの今昔館の持つ豊かなコンテンツを活用した博物館の新たなアウトリーチ手法として、
地域住民の方が学び/考える機会を創出することを目指しています。
大阪くらしの今昔館には、明治・大正・昭和の大阪のまち・住まい・暮らしを再現した
「住まいの大阪六景」模型が展示されていますが、その中の一つが、
昭和13年の地蔵盆の日を再現した「空堀通-商店街・路地・長屋-」
現地での実測調査や聞き取り調査、資料調査(古写真、航空写真、文献)によって、
町並みだけでなく、人々の暮らしや生業が詳細に再現されています。
「空堀の路地(ろーじ)と長屋を巡る旅」では、
この模型を手がかりに明治・大正・昭和へと続く空堀の住まいと暮らしの歴史を読み解いた後、
現在の空堀界隈を歩き、今に残る生活文化の痕跡を体感しました。
今回の案内人は今昔館館長の増井正哉先生。
増井先生は、1986年〜88年にかけて、空堀の路地の分布の実測調査、
居住地管理方法についてのヒアリング、お付き合いについてのアンケート調査を実施し、
1997年〜2000年にかけては、今昔館の再現模型の基礎となる調査を実施されました。
講演では、当時の調査について、聞き取り時のエピソードも交えながら楽しくお話いただきました。
空堀地区が「住まいの大阪六景」に選ばれた理由のひとつには、
空堀には集住の原風景、大阪の原風景があるからではないかと増井先生はおっしゃっていました。

空堀地区では、2000年代初めからは長屋再生も盛んになり、その動きは現在も続いています。
新しい取り組みも生まれており、長屋再生の先進地域とも言える存在になっています。
実際に現地を歩いてみると、確かに、長屋を改装した小店舗も多く見られるのですが、
近年では「民泊」への転用が相当数増えていることも確認できました。
また、大規模な空地、マンションへの建て替え中の現場なども点在しており、
かつての路地を介した長屋暮らしは、薄れつつある所も感じられました。


空堀は、文教地区としても人気の高い上町台地に位置するため、
民間事業者による開発意欲は旺盛で開発圧力の様なものも掛かっていることが想像されますし、
現状のまま「保存」することが最適解とも思いません。
小規模での建て替えや、複合用途への再生などで、
既存の物と調和しながら徐々に新陳代謝がなされてきたものが、
この数年の間に急速にかつ大規模に変化が起こっている点への危機感を強く感じました。
情報誌CEL