山納 洋
2025年10月08日10/3(金)のうめきたTalkin'About「都市の病を、鍼治療のように治す」には、
26名の方にご参加いただきました。
ブラジル・クリチバ市の元市長、ジャイメ・レルネル氏は、
1971年の市長就任以降、さまざまな都市問題を創造的手法で
解決に導き、「都市計画の奇跡」とも呼ばれました。
レルネル氏は、都市の病は根本的に治すことは難しいが、
効果的な一手により変化を起こすことは可能、との考え方に
もとづく様々な実践を「都市の鍼治療(Acupuntura Urbana)」
と命名しています。
“お金がなければ、知恵を使おう”
服部圭郎さんは、レルネル氏が提唱する方法論に感銘を受け、
彼の著書を翻訳。これまでに20回ほどクリチバ氏に足を運んでおられます。
ジャイメ・レルネル著、服部圭郎・中村ひとし訳
『都市の鍼治療: 元クリチバ市長の都市再生術』丸善出版 2005年
そしてその後、レルネル氏が紹介した事例や、
同じ文脈で取り組まれた事例を紹介したデータベースを
2013年より作成。現在までに357事例が紹介されています。
公益財団法人ハイライフ研究所「都市の鍼治療データベース」
https://www.hilife.or.jp/cities/
服部さんはこのデータベースを読み解くための手引書として
今年8月に『都市の鍼治療指南書』(鹿島出版会)を出されました。
服部圭郎著『都市の鍼治療指南書』 鹿島出版会 2025年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784306073753
本の中で、服部さんは、都市の課題を8つに分けて、
それぞれの課題に有効な69のツボを紹介されています。
今回は、8つの都市の課題と、いくつかの有効な打ち手について
ご紹介をいただきました。
その中には、自動車専用道路を整備する、ランドマークをつくる、
といったハード寄りのものもあれば、空き家対策やコミュニティ力の向上といった、
まちなかでの小さな取り組みとして実現できるものもあります。
市長でなくても、都市計画家や建築家でなくても
都市の“鍼灸師”になれるというのが、励みになります。
逆にそこに住む人を幸せにしていない都市再開発というものも、
世の中にはあまた存在しています。
「都市を再生させるための打ち手とはどのようなもので、
その鍼治療を行うことができるのは、誰なのか?」
こんな問いを携えて指南書やデータベースを読むと、
多くの人の役に立ちそうです。
情報誌CEL