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2022年04月14日 by 池永 寛明

【起動篇】あなたが前に進めない理由 ― ビジネス実践編(2)

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桜花爛漫。琵琶湖北の海津大崎の湖岸4kmにわたる桜並木は圧巻。桜は変わらないが、桜を観る人は変わる。ジョギングしながら桜を観る人、自転車で走りながら桜を観る人、カヌーやカヤックを漕いで湖上から桜を観る人など、桜を観るスタイルは年々変わっていく。

 

今年、あなたは桜を観に行きましたか?桜をなぜ観に行ったのですか?桜を観ている周りの人はどうでしたか?1年前2年前3年前と、なにか変わったことはなかったですか?それに気づいた人と気づかなかった人。そこに、大きな差が生まれる。

 

 

1.市場を観なくなった

 

「売れなくなった。これからどうしたらいいんだ?」と上の命令で、みんなが集められた。「売れないのは、なぜだ?」市場が厳しくなったから、競合が安売りしたからというような話を少ししたあと、「じゃ、どうする?」という議論になって出てくるのは


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といった月並みな、具体性のないプランばかり。これでは、なにも解決しない、動かない、変わらない。しかしそもそも

マーケティングってなんだろう?


マーケティングだといって、3C4P分析だとかSWOT分析だとかのフレームワークを使って、市場を分析して戦略を策定しようとするが、そもそも「市場・顧客」をつかんでいないので、「なにがどうなっているのか」が分からない。だから戦略の核心を外す。理論とかロジックなどと難しく考えてばかりいないで、「市場・顧客」を


 

普通に見たらいい
素直に耳を傾けたらいい

 

のに、そうしない。格好よく話さないと外に評価されない、横文字で表現しないと馬鹿にされると思うようになったから、難しく難しく考えるようになた。しかしそもそもマーケティングとは

 

Market+ing

 

と書く。市場は常に変化しつづける。市場は常に現在進行形である。しかしその市場を直視しないから、本当の市場が観えない。その市場を観て動かないから、売れない、お客さまは来られなくなる。内である組織内ばかりを見て、外である市場を見ない。いつからか見るものがちがうようになった。

 

 

2.「魔法の言葉」で思考停止する

 

しかし組織のなかは、外の市場を知らない人ばかりではない。市場の変化を観察して本質をつかんでいる人は組織のなかにはいる。にもかかわらず企業なり組織なりの戦略や計画としてまとめられるときは、本質をつかんでいる人の知見はかき消され、戦略としてのリアリティを失っていく。だから企業や組織の戦略や計画は次のように締めくくられる。


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というビジネスの「魔法の言葉」が羅列された方針とか計画が世の中には多い。「これからどうする」「どう変える」を市場を観ていない人たちだけで議論したとしても、具体策は出てこない。だから「魔法の言葉」がでてくる。この魔法の言葉を使うと、なんとなく分かったような、締まったような気がする。しかしこの言葉で締めると、組織としての思考は停止する。  


 

組織の内ではそれで通用するが、外では通用しない。それではなにも動かない、変わらない。このように、ビジネスの「魔法の言葉」で締められる戦略・計画は多い。だから前に進まない。

 

 

3.前提条件を変えない

 

「これからどうなる?これからどうしていく」を考えるとき、社内の誰かが市場環境、法規制、技術動向、顧客動向、競合動向を情報収集して、時間をかけてまとめられた資料から議論が始まる。ああでもないこうでもないと、一応はその情報を共有する。しかしそれは「ちゃんと調べています」という社内儀式にすぎず、そこから変化を読みとって本質をつかまず、この言葉が飛び出す。

 

「それはそうと」
「さあ、本題に入ろうか」

 

と「じゃ、どうする」という議論に入り、それまでの「市場・環境」変化の議論は吹っ飛び、前提条件は前のままで、「どうするか」の議論をする。

 

市場は常に変化している。その時代ごとの「変化のドライバー」が発生し、市場が変わる。市場は変わっているにもかかわらず、前提条件を変えないので、自社が認識する市場はずれる。だから戦略・計画は絵に描いた餅となる。課題はいつまでも解決しないままで、目標は実現しない。


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なぜそうなるのか。それは変化の兆しをつかんだとしても、それを「自分ごと」として考えないからだ。「自社ごと」「自組織ごと」として動かないからだ。日本の組織は変化の兆しをつかんでも、前提条件を変えないことが多い。市場が変化する前の市場のまま、前の前提条件から「これから」の議論を展開する。だから日本は現実から乖離していく。

 

そういう日本人だが、変革という言葉、改革という言葉、イノベーションという言葉が好き。とりわけトップは好き。だから社内・組織内の資料には、好んでその言葉が書き込まれる。それはなぜか。

 

そのほうが力強く見えるから

 

そう言ったり、書いたりした方が剛毅果断に問題を解決していこうとするような攻めの姿勢の印象を与えると思うから。しかし言うだけ書くだけで、実際にはそれを実行することはない。具体的に変革などしない、改革などしない、イノベーションなどしない。なぜ実行しないのか。

 

本当は上が
「それをすることを望んでいない」
ことを知っているから

 

だから変革だ改革だイノベーションだと、口では威勢よく言っているが、腰をひいている。真に受けて、変革などしようものなら大変なことになるということを、みんな知っているから、だれも本気で変革などしない。トップが本気で変革しようと考えない限り、本当は変われない、変わらない。だから前に進まない。

 

 

4.コミュニケーションが機能しなくなった

 

「意味わからん、訳わからん」と上司は部下に言われる。上司は本当に言いたい「意味」を込めて暗号化して、部下に話をする。部下はその上司の言葉を翻訳して、その「意味」を解釈しようとする。これが機能しなくなった。「意味わからん、訳わからん」となった。逆に上司も部下の言動が「意味わからん、訳わからん」と思うようになった。お互いのコミュニケーションが成り立たなくなった。


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上司と部下、親と子ども、私とあなたが同じ「暗号表(コード)」を使っていないと、送り手の想いが伝わらない。意味が共有できなくなった「意味わからん、訳わからん」は、親子間・上司・部下間など世代間でおこっているだけではない。同世代でも、同性間でもおこっている。この「エンコーディング・ディコーディング」の失敗は、現代社会のいたるところでおこっている。なぜそれがおこるのか。それはそれぞれの

 

「知的基盤」がちがっている

 

からではないか。これこそ現代社会の最大の課題のひとつではないだろうか。その「知的基盤」とはなにかは次回に考えたい。

 

 

(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)

〔note日経COMEMO 4月13日掲載分〕

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