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2021年11月01日 by 池永 寛明

【起動編】コロナ時代に踏み出すのは現在 ― 日本の時計を動かす(下)



「コロナ禍のあとは、コロナのまえではない」と昨年3月に書いた。「コロナ禍影響は10年つづく」と今年3月に書いた。そして現在、「2020年代はコロナ禍に伴う社会影響がつづく『コロナ時代』となる」と考えている。

 

10年後の2030年、20年先の2040年、30年先の2050年から振り返ったとき、「あのときのあれからだった」という出来事・災禍・事件がある。そこから時代が変わるということがある。それを契機に、社会的価値観・意識が変わり、新たな技術や知的基盤(歴史・文化)をプラットフォームに様式を変え、時と場・機会が転換され、生活、都市や地域、産業・経済を変えていく。その社会の構造変化のメカニズムを拙著「日本再起動」で書いた。



1.まちはだれのもの?


この「問い」に、コロナ禍後社会が象徴される。

コロナ禍前に考えていた「コンセプト」をゼロベースで考え直された都市再開発プロジェクトにかかわらせていただいている。タワーマンションや高層オフィス・複合商業施設を核としたまちづくり、駅を中心としたコンパクトシティ、DX・デジタル情報を活用したスマートシティといった、これまで日本が進めてきた「まちとはなにか」のコンセプトをご破算にして、コロナ禍後のまちを見つめている。

 

まちづくりは、先を読まないといけない。10年先、20年先、30年先の生活・社会の姿を想像しなければならない。逆にいえば、今ある東京・大阪・名古屋などの日本の都市や世界の都市は、10年前、20年前、30年前に「こうありたい」まちとして想像し、デザインされ、つくり、育てつづけられたといえる。超高層のスタイリッシュなビルが林立し、情報技術を駆使した「スマートシティ」を標榜した、自慢すべきまちであり、都市は繁栄の象徴だった。それがコロナ禍で一変した。コロナ禍テレワーク・オンライン時代に入り、巨大ビルには人がいなくなった。

 

「パンデミックで人々が公園を必要としていることに気づいた」とアメリカは「10Minute Walk」を掲げ、2050年までに全米の都市に暮らすすべての人の徒歩10分圏内で、豊かな緑地を利用できるようにしようと、動きだした。2024年に夏季五輪のあるフランスのパリは、「15分都市計画」を掲げた。2024年までに、誰もが車なしでも15分で、仕事・学校・買い物・公園、あらゆる街の機能にアクセスできる都市にしようと動きだした。このアメリカやパリがコロナ禍後を見据えたまちづくりの範となる都市があった。

明らかに潮目が変わりつつある。コロナ禍前から長年取り組み、何度も「世界でいちばん住みやすいまち」世界一位となったオーストラリアのメルボルンの戦略が、コロナ禍後に一気にメインストリームとなった。メルボルンの中核コンセプトは「20-nimute−neighborhood(20分生活圏)」。健康で文化的な暮らしに必要なもの(買い物、教育、ビジネスサービス・コミュニティ施設・娯楽・スポーツ施設)に、家から徒歩・自転車・公共機関で20分の範囲内でたどり着ける街にしようとする「人間中心」のまちづくりである(「プラン・メルボルン」(2017−2050))

「世界でいちばん住みたいまち」といわれるメルボルンは、20年以上も前から都心回帰策をうち、産業・都市・文化・食・スポーツ・観光・トラムなどの地域交通戦略を統合した魅力的なまちに向け、着実に歩みながら、まちに住む人が必要な機能に20分以内でアクセスできるまちづくり「20分ネイバーフッド」をおしすすめている。


メルボルンのまちづくりのコンセプトを描いたのは、街を「ビルと車のための街」から「人間のための街」への転換を世界各都市ですすめているデンマークの建築家であり都市デザインコンサルタントのヤン・ゲール氏。コペンハーゲンのヤン・ゲール事務所を訪ねて、日本と世界の街づくりについてインタビューした。

 

「駅を起点に建物のデザインからまちをみる」コンパクトシティのアプローチと、「人を中心に人とまち、人とライフスタイルとの関係からまちをみる」アプローチのちがいがある。日本とヤン・ゲール氏の考え方は、とてつもなく大きな差があった。


コロナ禍前、「建物・駅からまちを考える」日本と、「人・家からまちを考える」ヤン・ゲール氏の「ありたい街の姿」とは決定的にちがうと考えていたところに、コロナ禍に入った。この「人・家から考える」まちづくりがコロナ禍後の中核になろうとしている。これがコロナ禍後を考える重要な論点のひとつ。


2.なぜ技術と社会がつながらないのか?


技術は驚くほどのスピードで進み、かつ広範囲にわたる。

ヒューマンデータと社会をつなごうとする大学のプロジェクトにかかわっている。AIをはじめとするDXを活用して、様々なデータと社会をつなぎ、新たな価値を想像して、未来社会づくりをめざしている。そのデジタル情報の社会実装プロジェクトにかかわるなかで、気になることがある。

AIやロボットなどの日本最先端の技術を用いて得られるデジタル情報と社会・生活・都市をつなごうとするプロジェクトが進行するが、目指す技術は明らかであるが、目指す社会・生活・都市が見えてこない。その姿はAIまかせで明らかになるのではない。人間が読み解かないといけない世界がある。その姿が見えなければ、技術・データは社会とつながらない。噛み合わない。なぜか?


私たちは社会・生活者の空気・息遣いとか動きが見えなくなっているのではないだろうか。社会・市場の変化・生活者のインサイトがつかめなくなっている。社会課題の解決をおこなうことが大切だといっても、そもそもの課題が見えていない。だから仮説もつくれない。


だから技術と社会が乖離する。モノが売れない。サービスが評価されない。提案が受け入れられない。そもそもの「社会」がわかっていない。

企業や組織が本来できていたが、できなくなった力がある。事業・組織活動のなかでの市場認識・生活者の姿が想像できなくなった。現在しか見なくなり、過去を振り返らなくなったので、過去が忘れられ過去は消えた。こうして企業・組織の知的基盤は脆弱となり、将来が読めなくなった。技術は進歩するが、社会と乖離するようになった。



3.コロナ禍後社会 ― 心と和の時代


「コロナ禍はコロナ禍前社会をリセットする」とCOMEMOで書きつづけているが、新型コロナウィルス感染拡大対策のための「行動抑制・制限」はテレワーク・オンライン化による社会・生活・企業行動様式の変化を加速させ「いつでも・どこでも・だれとでも」社会に移行しようとしている。




新しい社会はDX、ロボティックス・5Gなどの技術の利活用がベースにあるが、コロナ禍影響の本質は「社会的価値観」の変化にある。たとえば生きがいを与えてくれると思っていた会社が、そういう場ではなかったという当たり前のことに気づいた。テレワークとなり接待・出張・転勤が減って、会社から家に戻り、家でみんなが一緒の生活が中心になり、自分時間が増え、家の中の親と子・家族・友だち・近所の人たちの関係の意味を再発見しつつある。お洒落をして三ツ星のレストランで豪華な料理を食べることが贅沢だった夢が、家族みんなで家で料理をつくり普段着で食べることがなによりの喜びだったことに気づいた。


 

大切な人と人がつながる和、よりよく生きる(ベネッセ)ことが大事、幸福で肉体的・精神的・社会的に満たされる気持ち・心(Well−being)を求めていくことが大切だと気づいた人々が増え、行動しはじめていることがコロナ禍後社会の姿ではないか。コロナ禍社会のキーワードは以下、





4.コロナ時代に踏み出すのは現在。



9月に入ってコロナ感染者数は大幅に減少した。しかし新規感染者数が増えつつある兆しがあり、世界的にも増加傾向にある。これから新型コロナウィルスの感染状況が、どうなるのかは、ワクチン接種や行動様式や政策次第であるが、おそらく2022〜23年までには疫病としてのコロナ禍は収束すると考えられている。

しかしそれ以降もコロナ禍を契機とした社会影響はつづく。まちを歩く人々はマスクをつけたままだろうし、ソーシャルディスタンスはつづくだろう。空調や室内環境など感染拡大を防止・軽減する商品・サービスは進歩する。このようにコロナ禍による社会影響はつづき、2020年代の10年間は「コロナ時代」となるだろう。

コロナ禍の部分的収束に伴ない、世界各地で部分的に「反動需要」は起こり、新たな様々な取り組みがはじまる。コロナ禍が世界的に収束するだろう2024〜2025年に、コロナ復興となる。世界イベントが開催され、コロナ禍後に向けた新たな社会システムがいろいろなフィールドで提案され、社会実装に向けた実験がおこなわれる。



これら試行錯誤を経て、2026年以降の社会は大きく変わる。コロナ禍後社会のコンセプトは、「心(Well-being)の時代」と「和の時代(人と人の関係)」。その社会を実現・サポートするDXをはじめとする技術が密接につながり絡み合わなければいけない。

先の話ではない。2020年後代半のコロナ禍後社会づくりに向け、2021〜2023年に、なにを考え、どう準備し、どう行動するかが求められる。日本時計を止めている場合ではない。日本時計を再起動させよう。

(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)

〔note日経COMEMO 10月29日掲載分〕


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