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2021年06月25日 by 池永 寛明

【起動篇】日本をダメにした「折角」(1)

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日本がダメになった理由は、この漢字に凝縮されるのではないか。日本が変われないのは「折角(せっかく)」という漢字を多用するようになったからではないだろうか。「めんどくさい」もよく使うが、こちらは古事記にも登場した由緒正しい言葉。

みんながよく使う「折角」とはどういう意味だろうか。よくわからない。文字どおり「角(つの)を折る」という漢字だが、現代日本人は「折角」が好き。自分の関係者に対して意見するときにも、自分自身をコントロールするにも「折角」をよく使う。


「折角、準備してきたのに…」

「折角、頑張ってきたのに…」

「折角、買ってきたのに…」

「折角、お母さんがつくったのに、粗末にして…」



などと、よくつかうが、とても怪(あや)しいげな言葉。

 



1.意味がよくわからない言葉 ― 折角

 


「折角」の本来の意味は、“丹精(たんせい)こめて、丁寧に進めていく”ということ。


「折角、ここまでお見えいただいたのですが…」


といったように副詞的で使うが、日本語的には変な感じがする。同じくよく使われる「ようこそ」と似ているが、よくわからない。折角のあとに否定が入り、「折角、やっていただいたのに、すみません」と後半がつづく。“折角やっていただいたのに、意に添わなくてどうもすみません”という意味となる。“折角〜した。”という終わり方ではなく、ネガティブな結論になったときに、前段に”折角”が使われる。


この折角は日本人がよく使っている漢字だが、どういう意味なのか、意外にみんな、よく分かっていない。いろいろな意味があるが、現代日本人が使っているのは


「自分が努力して積みあげてきた」


という意味の折角のあとに、否定的な事柄を接続する。


「折角、頑張ってきたのに、やめてどうするの?」


 “努力して積みあげてきたのに、折角だから辞めるなよ”― 辞める人間に対して、辞めないほうがいいというために


「これまで苦労したんだろう」


という意味を込めて


「折角、1年間勉強してきたのに、この時期に
受験するのをやめるのは勿体ない」 


という言い方をする。よく使っている


「折角、大企業に勤めているんだから、辞めない方がいい」 


という「折角」って怪しい。辞めるのは本人の自由。辞めて学び直しをしたり、再出発してもいいだろう。それをとめるための「折角」。


「折角、会社を大きくしたんだから、
会社をたたまなくてもいいのじゃない」


そんなことない。会社のことは本人がいちばんよく知っている。


「折角」から解放されると、いくらでも変われるのに、日本人の多くはこの「折角」にとらわれる。

 


2.「なぜ私たちはリセットできないのか?」の答えは ― 折角


 「なぜ私たちはリセットできないのか?」の答えは「折角」。なぜ私たちはリセットできないのか、なぜ変われないのかというと


折角だと思っているから、変わらない、変われない。


 のではないだろうか。「折角」という言葉が入った文章をつくると、日本人がどれだけ変化することを嫌がっているのかがよくわかる。“折角…したのに”と、すらすらと文章が浮かぶ。


「折角、お母さんがつくった弁当なのに、なぜ残すの?」 


美味しかろうが不味かろうが、残すという行為に、本来は“折角”はつながらない。お腹が痛くて食べられなかったかもしれないが、そこに「折角、つくったのに」がのっかる。残すことを許さないために、“折角”が登場する。


「折角、こんな大企業に勤めているのに、なぜ辞めるの?」

「折角、良い大学で勉強しているのに、なぜそんなところにいくの?」


辞めさせたくないから、“折角”をつかう。“折角、良い大学に行っているのだから、有名な会社に行けよ”という意味で”折角”を使う。

「折角」は、もともとは相手に言う時、相手の行動を押しとどめようとする時に使っていたのだが、現代日本は「自分」に使うようになった。

 

「折角、頑張って社長になったのに、どうして

”若造”に席を譲らないといけないのか?」

 


3.なぜデジタルが進まないのか?

 

「折角、東京に出てきたんだから、コロナ禍がつづこうと田舎に帰れない」


と言う。論理的には、“折角”って可笑しい。コロナ禍で東京にいる必然性がなくなっても、“折角、東京に出てきたから、今さら帰れない”といっている。その”折角”ってなに?


 東京に出てきたのは自分が決めたことなのに、それを変えられない、辞められない、止められない。それができない「excuse(言い訳)」のために、”折角”を使う。


その文脈で


「なぜ日本ではデジタルが進まないのか?」


を考えると、その答えが見えてくる。


 ”折角、今までのやり方でやってきたのだから、変われない、変えられない” のである。


”折角”を使うのは


 “他人と差をつけるため、上に行くため、コツコツと積み上げてきた。それをパーにできない”


と考える。「折角、長い間、その会社に勤めているのだから」と言う時は、“その会社に入社するのは難しかった、我慢して頑張ってきた、他の会社より給与も待遇もいい。折角、その会社にいるのだから、辞めたらもったいない”という意味でいっている。


なぜデジタルが進まないのかは、この「折角」が要因のひとつ。「折角」が現代日本社会の閉塞を支配している。


コロナ禍の日本社会の課題と方向性を、「折角」という漢字を軸に考えていきたい。



(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)


〔日経新聞社COMEMO 6月23日掲載分〕


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