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2020年12月23日 by 池永 寛明

【交流篇】現在錯誤している人に ― コロナ禍、これからどうなる(6)



コロナ禍の現在、10年先の中長期計画を出すべきなのか?そもそもコロナ禍のまっただなかで10年先の社会・産業を描けるのか?コロナ禍後社会の姿が見えてから中長期計画を策定すべきではないか? ― 10年先のありたい社会像に向けた、関西経済連合会の「関西ビジョン2030」の検討会に、池永も検討委員として加わった。


「時代が先に進んだ。2030年が一気にやってきた。10年後はどうなる?」
2030年にこうなるだろうと思っていた事柄を、10年前倒しでコロナ禍の現在「社会実験」している。しかしそれらは10年前に導入・実現できたはずの事柄だったが先送りした。しかし2020年の現在もそれらを導入・実現できず、さらに2030年に先送りしていたDXなどの事柄が、コロナ禍で強制的に前倒しされている。


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1.繁華街から人が減らないのも

毎日のように「過去最高」という新規コロナ感染者数が報じられ、“すごいことになっている”と思っても、“そうやけど”と他人事のように受けとめる。4月の緊急事態宣言で、外に出ることを自粛したが、12月に入り大阪赤信号・GoToトラベル一時停止・営業時間短縮要請・年末年始の外出自粛要請・医療緊急事態宣言など次から次と発せられても、8ヶ月間日々繰り返されてきた国や自治体や有識者やマスコミの同じような言葉やスローガンに、コロナ禍慣れしコロナ禍自粛疲れした多くの人に響かなくなり


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と考えるようになり、繁華街はいつもと変わらない人出となり、オンライン講義を極力減らしたいと学校は対面授業・講義を復活・継続し、これ以上はテレワークはできないと出社する。コロナも大変だけど、経済がまわらないと大変という。


海外のコロナ感染状況やウイルス変異を聴くと、“世界は大変やな”とは思うけど、日本は世界と比べて感染者は少ない、“日本はまだ大丈夫”と考える。医療現場や自治体の大変さが報道に取り上げられるが、企業も店も学校も決して「普通」ではない。コロナ禍前にすでに機能不全していた構図がはっきりといろいろな所で浮きあがる。コロナ禍は不安だけど、なんとかなる。これからどうなるのか分からないけど、なんとなる。コロナ自粛に疲れてコロナ慣れして、思考停止がはじまっている。


「いつまでつづくんやろか」― 連日のコロナ感染者数の過去最高更新報道で、コロナ禍は今年で目途がつかず、来年もつづく。思っていたよりも長くかかるんやという空気につつまれている。太平洋戦争の3年目のような空気が漂う。第1波、第2波は新型コロナウィルス対策に一斉に取り組んで感染を最小限にとどめた。一時は落ち着いたが、初冬に一気に感染者数が増え、第3波となった。


これまでは激変緩和、これから半年に、コロナ禍の本当の姿が顕れてくる。コロナ禍を抜け出すことができるのだろうか。


しかし、なぜこうなるのだろう。


2.現在を錯誤する日本

新型コロナウイルスは病気だから、予防して、治療しなければならない。目に見えない新型ウイルス感染拡大対策は、これまでの「集中の社会構造」を否定した。3密回避・テレワーク・オンライン講義などの新たな「行動様式」が強制的に導入された。


ともすれば日本は、目に見えている現象である問題(trouble)ばかり対策を終始し、それらの問題を引き起こす要因である課題・本質(problem)を特定し掘り起こして課題解決しない。問題(trouble)対応ばかりでは、コロナ禍のそもそもの本質的な社会課題を根治療法できない。対症療法ばかり目がとられ、そればかりを対応するので、大切なことを見ないよう考えないようになり、分からなくなり、より状況を悪化させる。


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いま大切なのは、コロナ禍が社会で何をひきおこしているのか、どのような影響を与えようとしているのか、その影響のメカニズムを社会全体で構造的に捉えて、社会課題と本質をつかみ、いかに対処できるかどうかである。


コロナ禍社会をどう捉えるのか。
コロナ禍を大断層(リセット)ととらえるのか、コロナ禍は「災害」だから収束すれば元に戻ると考えるかで、その後の社会は大きく変わるのではないだろうか。


コロナ禍で、会社・学校中心から家にいることへと、日常生活が8ヶ月前に強制的に変えられた。
緊急事態宣言は、これまでの社会システムを強制終了させた。コロナ禍対策を契機とした「ワークとライフ」の行動様式が、社会的価値観を変える。場を変え、時間を変え、社会を変えることがコロナ禍の本質である。


変化した社会的価値観は、需要構造を変え、供給構造を変え、産業構造を変えていく。会社・学校・家族のカタチを変え、都市と地方の構造を変える。


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現在をどう捉えるのか、時代をどう読み解くかで、社会・市場・生活などの未来の像を大きく変わる。


しかしながら、そう考えない人が多い。
コロナ禍のいまはテレワークしているが元に戻るはず、全国からみんなが東京に集まって語れないが元に戻るはずと考える人が多い。


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変わることと変わらないこと。
それらがなにかをつかむ。コロナ禍の社会変化は、働く場を会社から家として、強制的に行動様式を変えた。1日の時間におけるライフとワークのバランスを変え、ライフとワークが溶け合い、混じり合い、新たな価値が生み出されつつある。そして働くこととはなにか、会社とはなにか、学校とはなにか、家とはなにか、家族とはなにかを考えなおして再定義する転換期が、現在のコロナ禍期ではないだろうか。


幕藩体制の家で生業から会社に変わった明治維新から150年以来、地方から都会に変わった戦後75年以来の大断層(リセット)がコロナ禍期ではないだろうか。仕事は会社から家が中心にとに変わろうとしている。そう捉えるかどうか、そう思って行動するかどうかでこれからが大きく変わる。しかし、現在錯誤している人が多い。


コロナ禍は大断層(リセット)ではない、収束したら元に戻る、なにも変わらないと考える人が現在7割いたとしても、3年後には少数派となる。


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未来予測は信じたもののみが、能動的に生きることができる。たとえ見通しや予測が外れたとしても、変化に応じて生きていける。

「関西ビジョン2030」は、コロナ禍をリセットとして位置づけることから出発した。
コロナ禍で、これまでの社会システムがリセットされるという前提で、これからの社会が構造的にどのように変わり、どうありたいかが議論された。


コロナ禍のまっただなか世に出た関西経済連合会の「関西ビジョン2030」。過去から現在、コロナ禍の構造を読み解き、関西と日本と世界を俯瞰し、2030年のありたい姿を描き、そこをめざす戦略シナリオをコロナ禍のなかで議論してきた。コロナ禍後に社会を変えるトリガーとなる「行動様式」をつくりだす働く場の主体である経済団体がコロナ禍のなかで未来を見つめ考えたことに、意味があるのではないだろうか。


(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)


〔日経新聞社COMEMO 12月22日掲載分〕