大阪ガスネットワーク

エネルギー・文化研究

  • サイトマップ
  • お問い合わせ

CELは、Daigasグループが将来にわたり社会のお役に立つ存在であり続けることができるように研究を続けています。

  • DaigasGroup

JP/EN

Home>コラム

コラム

コラム一覧へ

2019年10月16日 by 奥田 浩二

スタートアップとのつきあいかた(9)

スタートアップとのつきあいかた(9):


海外事例:ベンチャービジネスの活性化 カナダ トロントのMaRS

  今回から、数回にわたり海外の事例をご紹介します。いずれもベンチャービジネスの活性化事例です。初回は、カナダのトロントにあるMaRS( https://www.marsdd.com/ )という機関です。 

トロントに誕生したMaRS


 カナダ最大の都市トロント。メインターミナルであるユニオン駅の北には金融街(ファイナンシャル・ディストリクト)が広がり、トロント市庁舎を超えると多くの病院が立地しています。その北には、政府系機関そしてカナダ屈指の大学の一つであるトロント大学(University of Toronto)があります。トロント大学は、最近ではAI(人工知能)の研究で有名ですね。AI以外でも医学分野をはじめ多くの分野でカナダトップクラスの大学です。

  ユニオン駅からトロント大学までは2キロほどの距離です。その中に、重要な機関がコンパクトに集約しています。


 今回訪問したのは、その中心ともいえるところに立地しているMaRSという機関です。(図表1.参照) 

図表1.MaRSとその周辺の様子


(左)MaRS周辺の様子(google mapを加工)
(中央)MaRSの西タワー棟(West Tower) (筆者撮影 2019年7月)
(右)MaRSのモニュメント (筆者撮影 2019年7月)



 MaRSが開所したのは2005年。遺産ビル(Heritage Building)と南タワー棟(South Tower)、東タワー棟(East Tower)がオープンしました。次いで2014年に西タワー棟(West Tower)がオープン。図表2にMaRS全体の様子を示しています。全体の床面積は約14万平方メートル。北米最大の都市型イノベーションハブ(North America’s largest urban innovation hub)になっています(注1)。

   (注1) https://www.marsdd.com/about/


図表2.MaRS建物群

 

Google earth で当該地を表示し筆者加工

 MaRSという名前の由来は「Medical and Research Science Centre」とか「Medical and Related Science」から付けられた、とも言われていますが、現在は、「MaRS」という呼称に統一されています。

MaRSの過去、現在、未来

 

 MaRSの場所には、以前は病院があったとのことです。その病院が売りに出されたときに事業家が購入し、PPP(Public Private Partnership)形式でMaRSが開発されました。

 MaRSが支援する対象分野は、医療分野(ヘルステック)から始まり、その後、金融分野(フィンテック)、クリーンテック、エンタープライズ(AI利用)と拡大してきました。図表1(左)を見ると、地元の資源に注力していることがわかります。これらの4分野別に起業や企業活動を支援するチームを編成し、起業家と企業、研究者、投資家、人材、キャピタリストなどをつないでいます。MaRS自身はファンドを保有していますが規模はそれほど大きくはありません。MaRSの投資をきっかけとして、外部のファンドが投資をするという「呼び水」的な役割を果たしているとのことです。また、起業支援だけではなく、コーポレートパートナー制度を導入することで、海外企業の誘致も行っています。
 現在の入居企業数は150社、これまでの雇用創出数は12,800人を超えています。また、この地区では年間1,200件もの起業に関連するイベントなどが開催されているとのことです。さらに、MaRSのホームページを見ると、これら以外にも多様な数字が掲載されています。活動の成果を数字で把握している様子がうかがえます。

 短期間に急成長しているMaRSですが、現在も成長は続いています。図表1(左)の湖岸のウォーターフロント地域に新たなビルを建設中であり、2022年の完成を目指しています。

地下に伸びる街

 

 今回、MaRSを訪問するにあたってトロントの市内を歩いていると不思議なことに気づきました。


 地上を歩いていると飲食店などがあまり見つからないのです。トロント大学までくるとさすがに飲食店はいくつか発見できますが、それも多くの店があるというわけではありません。 


 トロントはカナダ最大の都市です。しかもビジネス街。どこで昼食を食べるのだろうという疑問がわきます。建物のなかにあるかと思って中を覗いても見当たりません。 


 実は、トロントは地下街が発達しているのです。地下鉄の駅や近隣のビル同志が地下街でつながっています。その地下街にフードコートを含む飲食店や商店があります。昼食時に地下街を歩くと人々でごったがえしています。いくつかの地下街もつながっており、曲がり角を数回過ぎると、どこを歩いているのかわからなくなります。特にユニオン駅周辺は複雑です。

  旅行者や訪問者は道に迷うことが多いのでは、と感じました。しかし、生活している人にとっては、いったん自分が働くビルにはいれば、寒い日や雨の日でも天候を気にせずに移動できます。生活の便利さを地下に実現している街だといえます。

 次回は、英国ロンドンに移動して、インペリアル カレッジ ロンドンの新しい取り組みを紹介します。

今回のまとめ

  ・MaRSは、都市部においては北米最大クラスのイノベーションハブです。
  ・医療、AI、金融など地元の強み(資源)を活かして新たなイノベーション創出を目指しています。
  ・成果実績をしっかりと数字で把握・管理しています。
  ・短期間で大きく成長しましたが、その成長はまだ継続しています


 

次回の予告

 

  ・英国 インペリアル カレッジ ロンドンのWhite City Incubator

 

スタートアップとのつきかいかた 記事一覧 

   第1回:起業の現状はどのようになっているのか
      http://www.og-cel.jp/information/1278928_15932.html

 
   第2回:2つの起業タイプ
      http://www.og-cel.jp/column/1279678_15959.html

 
   第3回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(前編)

       http://www.og-cel.jp/column/1279684_15959.html 

 
   第4回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(中編)

       http://www.og-cel.jp/column/1279955_15959.html

 
   第5回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(後編)
      http://www.og-cel.jp/column/1280447_15959.html

 
   第6回:ベンチャービジネスの活性化 福岡県福岡市の事例(前編)
      http://www.og-cel.jp/column/1280808_15959.html

    
   第7回:ベンチャービジネスの活性化 福岡県福岡市の事例(中編)
      http://www.og-cel.jp/column/1281279_15959.html

 
   第8回:ベンチャービジネスの活性化 福岡県福岡市の事例(後編)
      http://www.og-cel.jp/column/1282055_15959.html

 
(執筆者:エネルギー・文化研究所 研究員 奥田 浩二)

本連載について 

 本コラムでは、起業で地域を元気にするための鍵を考えていきます。記載内容は、執筆者が入手した情報をもとにしていますが、執筆者の意見を含んでいます。各内容は、執筆者が所属する機関・企業の公式・公的な見解を表明するものではありません。




  • U−CoRo
  • 語りべシアター
  • 都市魅力研究室
  • OMS戯曲賞
Informational Magazine CEL

情報誌CEL

【特集】ウォーカブルの本質を考える

近年、「ウォーカブル」という言葉をよく耳にします。 まちなかを車中心から人中心へ...

バックナンバーを見る
  • 論文・レポート・キーワード検索
  • 書籍・出版
  • 都市魅力研究室
  • FACEBOOK

大阪ガスネットワーク(株)
CEL エネルギー・文化研究所

〒541-0046
大阪市中央区平野町4丁目1番2号

アクセス