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2019年01月05日 by 池永 寛明

【交流篇】 “すみません、ありがとう”が減った日本

 


店員さんに偉そうな態度の彼氏とは、つきあってはいけない」

ネットでよく見かける。飲食店の店員さんにタメ口、命令口調、上から目線、横柄な態度をとる彼氏。コンビニの店員さん、タクシーの運転手さんに威圧的な態度をとったり、イライラして怒鳴り出したりする、そんな彼氏ってなんなん?最近とみにネットで、でてくるような気がする。


とはいうものの外国の方が驚くことは多い。飲食店で店員さんが料理を運んでくれて、「ありがとう」「どうも(ありがとう)」、お茶を注いでくれて、「すみません」「ありがとう」という日本人の姿にびっくり。レジで会計するときも、「ご馳走さま、ありがとう」というお客さまと、「ありがとうございます」というお店の人がお互いに頭をさげあっている姿が驚きであり、素敵であり、新鮮に映るという。


「ありがとう」という言葉が日本人の好きな言葉ランキング1位であるが、日本人の人と人との関係の中核観念に「感謝」があるといえないだろうか。自分が今あるのは自分以外の人「あなた」が自分をささえてくれるからで、だから「あなたに感謝」して「ありがとう」。自分以外の「あなた」がしてくれるから自分がある、だから「あなたに感謝」して、ありがとう。


日本人は「ありがとう」「すみません」と言いすぎると、指摘する人がいる。日本人の「ありがとう」は「有ることが難(かた)い」、滅多にない貴重なものをしていただいたという感謝の意であり、「すみません」は「澄みません」が語源で、「すみませんが、私のためにありがとう」と、感謝の意味を込めている。「I’m sorry」の翻訳「謝罪」の意味で言っているだけではない。


中国で、流行っていることがある。車に乗っていて、歩いている人が道をあけてくれたら、軽くクラクションを鳴らし「すみません、ありがとう」と片手をあげてお辞儀をする。日本に来た中国人のビジネスマンや留学生が、この日本での日常生活での様式・マナーを知り、中国に戻って「日本流」だといって始めている。品の良いドライバーはこれを真似て、中国でも広がりつつあるという。中国の人も、日本人の「人と人の関係における感謝」という中核の観念を理解して、その「行動規範」「行動原理」がとても素敵、心地よいと感じ、中国で広がっている。自分一人ではなにもできない、生きていけない、みんなで助けあわないと生きていけない、だから日本人は「ありがとう」、「すみません」と言ってきた。


お店の人がお茶をもってきてくれた、お茶を足してくれたら、“すみません、ありがとう”といっていけない理由はない。お金を払っているから、そうしてもらっても、ふーん、そうされるのが当たり前という雰囲気を漂わす人、横柄な態度をとる人が増えている。お金を出しているから、店の人が、相手の人がそうするのは当たり前という空気が漂う、なんでもかんでもお金お金お金の社会になっている。サービスの現場だけでもない、会社からも、工場からも、家からも、どんどん「ありがとう」が減っている。


「すみません、ありがとう」がお店の人たちの疲れを和らげるのに対して、お客さまの横柄な態度は店員さんの疲れに追い打ちをかける。最近国や企業が考える働き方改革は人手不足を背景とした休日増や過剰サービスの見直しだけでなく、お客さまのお店の人に対する感謝の意を込めた「すみません、ありがとう」を増やすことが最大の「クスリ」ではないだろうか。


私の好きな言葉「おおきに」も、大阪のまちから減ったような気がする。


(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  1227日掲載分

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