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2012年10月05日 by 鈴木 隆

科学を発展させた百貨店の会議

 米国の老舗百貨店であるメイシーズ(Macys)をご存知でしょうか。ニューヨークにあるメイシーズの旗艦店(写真)は、1ブロックすべてを占め、世界最大の百貨店といわれています。そのメイシー財団が後援し、1946年から1953年にかけて10回開催された一連の学際会議が「メイシー会議」と呼ばれています。

 

 メイシー会議は、後にサイバネティクス(動物と機械における制御と通信の理論)として結実する概念は自然科学だけでなく社会科学においても学際的な統合の手段を提供できるのではないか、という問題意識の下に開催されました。会議は、サイバネティクスはもとより、自己組織化理論、心理療法、認知科学などの発展に寄与しています。

 

 メイシー会議には、ノーバート・ウィナー(数学)、フォン・ノイマン(数学)、フォン・フェルスター(物理学)、ウォレン・マカラック(神経生理学)、ローレンス・キュビー(精神医学)、クルト・レヴィン(心理学)、ヴォルフガング・ケーラー(心理学)、ジョージ・ハッチンソン(生態学)、マーガレット・ミード(文化人類学)、ポール・ラザーズフェルド(社会学)、フィルマー・ノースロップ(哲学)など、当代一流の科学者20名あまりが会員として集まりました。さらに、クロード・シャノン(情報理論)、マックス・デルブルュック(生物学)、ローマン・ヤコブソン(言語学)、エリク・エリクソン(心理学)など延べ40名ほどの科学者もテーマに応じて招かれました。マーガレット・ミードは、議論に熱中するあまり歯が1本折れても気がつかなかった、と述懐しています。

 

 マーガレット・ミードの3番目の夫だったグレゴリー・ベイトソンも、同じく文化人類学者として会議に参加していました。ベイトソンは、サイバネティクスとの出会いを“生涯に起きた2大事件の1つ”といっています。実際、文化人類学から臨床心理学へ転向し、サイバネティクスを応用した統合失調症の理論化に没頭します。1956年に「ダブルバインド(二重拘束)理論」を発表し、心理療法に新たな流れを起こしました。

 

 日本語の「科学」は、西周が「百科ノ学」から造語したといわれています。百科ノ学と百貨店は相通ずるところがあったのでしょうか。いずれにしても、学際会議の開催によって、メイシーズの名は科学の歴史に刻まれています。社会貢献の模範事例としても、メイシー会議はもっと知られていいのではないかと思います。

 

写真:Macy's Department Store in New York city Photo by PlusMinus

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