大阪ガスネットワーク

エネルギー・文化研究

  • サイトマップ
  • お問い合わせ

CELは、Daigasグループが将来にわたり社会のお役に立つ存在であり続けることができるように研究を続けています。

  • DaigasGroup

JP/EN

Home > 論文・レポート検索 > 本の万華鏡『株式会社に社会的責任はあるか』

論文・レポート検索

Search

情報誌CEL

早瀬 昇

2011年03月25日

本の万華鏡『株式会社に社会的責任はあるか』

作成年月日

執筆者名

研究領域

カテゴリー

媒体(Vol.)

備考

2011年03月25日

早瀬 昇

住まい・生活
都市・コミュニティ

その他

情報誌CEL (Vol.96)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

 もう20年ほど前になるが、内橋克人さんをインタビューした際に、内橋さんの「法人資本主義の日本では…」という言葉にキョトンとしていたら、「君、法人資本主義も知らんのか!」と激怒されてしまった。大学では電子工学を専攻し経済学に疎かった私にとって、それが「法人資本主義」の提唱者である本書の著者を知る最初だった。
 法律上、便宜的に人格を与えられたにすぎない法人が、生身の人間を「会社人間」化するなどの形で支配する。この事態を「会社本位主義」と名付け、その構造を解明してきた著者が「企業の社会的責任」について考察したのが本書だ。
 その論理展開は異色だ。まず、他の文献では問題にされることさえ少ない「企業は責任の主体になりうるのか」という論題設定から始まる。ここで株式会社が焦点となるのは、大企業の圧倒的多数を占めることに加え、有限責任の法人であるからだ。
 株式会社は、所有者である株主が、自らの株の価値分までしか責任を負わず、それを超える責任は問われない。そこで、かのアダム・スミスは無責任な企業体が増えるとして、その設立を一部の例外を除き禁止すべきだと主張した。一方、J・S・ミルは株主が現に資本金を拠出し、それが明示されていれば、資本金が担保にできるとして、その設立を支持。事業資金を広く集めやすいことから、世界中に株式会社が広がっていった。
 では、その株式会社の社会的責任とは何か?刑法では法人に犯罪能力はないとされ、法人を処罰する法律は独占禁止法や訪問販売法などわずか。法人の経営者が責任を負うと考える方が実際的だが、米国で貯蓄貸付組合の破綻処理時に約4千人が投獄されたのに対し、日本の住専問題で刑事罰が科せられたのは時効の壁もあり2人だけ。そもそも株の相互持ち合いで、経営者の責任が追及されにくくなっている。これで良いのか…。
 このような視点からは、「企業批判に対しては社会事業への寄付によって対抗する」のが社会貢献活動であり、CSRは「企業改革を阻止あるいは妨害する役割を果している」ことになる。これらの主張は、評者には、ネガティブな側面だけを見すぎていないかと思える。有限責任法人の問題を問う視点から「大企業を解体して、できるだけ小さく分割する」とも提案されている。その可否はともかく、経営者が真に社会的責任を持てる体制の整備は確かに重要だ。
 本書の主張をどう評価するにせよ、CSRを議論する上で必読の書だと言える。

  • U−CoRo
  • 語りべシアター
  • 都市魅力研究室
  • OMS戯曲賞
Informational Magazine CEL

情報誌CEL

【特集】ウォーカブルの本質を考える

近年、「ウォーカブル」という言葉をよく耳にします。 まちなかを車中心から人中心へ...

バックナンバーを見る
  • 論文・レポート・キーワード検索
  • 書籍・出版
  • 都市魅力研究室
  • FACEBOOK

大阪ガスネットワーク(株)
CEL エネルギー・文化研究所

〒541-0046
大阪市中央区平野町4丁目1番2号

アクセス