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2019年06月17日 by 奥田 浩二

スタートアップとのつきあいかた(5)

スタートアップとのつきあいかた(5):
スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(後編)


事例「茨城県取手市・龍ヶ崎市」の3回目です。起業支援の取組みを読み解きます。(注1)


注1)前回(前編、中編)の内容は下記をご参照ください。


   第3回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(前編)

       http://www.og-cel.jp/column/1279684_15959.html


   第4回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(中編)

       http://www.og-cel.jp/column/1279955_15959.html


   本内容は「関西ベンチャー学会誌」(Vol.11、2019年2月)に投稿し、掲載された論文を再編集したものです。

   ただし、情報は一部更新しています。
   奥田浩二「茨城県取手市・龍ヶ崎市に見る起業支援の仕組み作り」『関西ベンチャー学会誌』Vol.11, 51-60頁, 2019年



活動の成果

  取手市と龍ヶ崎市は、起業支援活動に関するシンポジウムを2018年7月に開催しました。参加者は、北海道から沖縄に及び、注目の高さを証明しました。


 このシンポジウムでは活動成果を報告しています。それによると、レンタルオフィス利用者は98人、起業家カード配布枚数は71枚、起業応援団は195社になっています。開始2年あまりの数字としては、活動の有効性を立証するものでしょう。


 では、私たちは取手市と龍ヶ崎市の事例から、何を学べるのでしょうか。


地域政策としての起業

  今回の事例でまず注目すべきことは、目指す姿を「起業家タウン」として明確にし、それを実行するための組織(Match取手とMatchタウン)を編成したことです。Match取手の理事長は取手市長であり、Matchタウンでは取手市・龍ヶ崎市を含む関連機関が名前を連ねています。

 これは地域のトップが起業支援の取組みにコミットしていることの表れであり、起業支援を地域の政策の柱に据えていることを公に示すものです。このようなコミットは各活動にも反映しています。例えば、第2回ビジネスプランコンテスト(2018年3月開催)には、取手市と龍ヶ崎市の両市長が参加しました。

 このように、起業支援を地域政策として位置付けていることを具体的に見える化していくことが、地域で起業を活性化するためには重要です。


取組みのシステム化

  起業支援といえば、創業セミナーや起業相談が思い浮かびます。これらはもちろん重要ですが、取手市・龍ヶ崎市の事例をみると、各取組みが重要であるだけでなく、それらをつなげてシステム化しようとしていることが特徴です。システム化とは、個々の取組みを要素とし、それらをつなげることです。今回の事例では、ご紹介した各取組みを相互に関連させることで、「起業支援システム」を構築しようとしています。(図表1をご覧ください)

 

図表1. 取手市・龍ヶ崎市の「起業支援システム」

 

筆者作成

 

この「起業支援システム」には次のような特徴があります。

(1)取組みをつなげることにより、潜在的な(見えない)起業家・企業家を顕在化(見える化)しています。図の青線は起業家、赤線は企業家を顕在化するための各活動を示しています。

(2)起業活性化のための「場」を随所に設けています。「場」とは、モノ、サービス、情報や刺激・熱意を交換する物理的・心理的空間です。情報誌や社長塾、コンテスト、チャンレンジショップ、そしてレンタルオフィスが該当します。

(3)起業循環と経済循環という2つの地域循環を実現しようとしています。起業循環とは、「起業者が取組みを活用・事業者が参加→起業活動が活性化→市民の関心が向上→新たな起業の創出」というサイクルの実現です。経済循環とは、地域で展開する起業支援活動で収益を生み、その収益で活動を支えていく、というサイクルの実現です。地域の起業活動を活性化し、持続していくには、このような「循環」を地域に構築していくことが必要となります。

 起業支援システムをいきなり作ることは困難です。そのような中、取手市・龍ヶ崎市の事例は、地域政策として位置付け、個別の活動を展開し、それらをシステム化するという手順を考える貴重なベンチマークとなります。


 今回のまとめ


 ・起業支援を地域政策のなかに位置付けるとともに見える化することが重要です。
 ・単発の取組みを実施するのではなく、複数の取組みを結び付けて起業支援システムを構築しましょう。
 ・起業支援システムの要諦は起業循環と経済循環という2つの地域循環の実現です。

 


次回の予告


  ・ベンチャービジネスの活性化 福岡県福岡市の事例

スタートアップとのつきかいかた 記事一覧

   第1回:起業の現状はどのようになっているのか
      http://www.og-cel.jp/information/1278928_15932.html


   第2回:2つの起業タイプ
      http://www.og-cel.jp/column/1279678_15959.html


   第3回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(前編)

       http://www.og-cel.jp/column/1279684_15959.html


   第4回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(中編)

       http://www.og-cel.jp/column/1279955_15959.html


   
(執筆者:エネルギー・文化研究所 研究員 奥田 浩二)

本連載について

 本コラムでは、起業で地域を元気にするための鍵を考えていきます。記載内容は、執筆者が入手した情報をもとにしていますが、執筆者の意見を含んでいます。各内容は、執筆者が所属する機関・企業の公式・公的な見解を表明するものではありません


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