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2018年04月27日 by 池永 寛明

【場会篇】 「東京一極集中」幻想から、どう抜けだすのか?

 


大阪から企業が離れる。大阪から人々が離れる ─ 大阪は、不法駐車が多い。横入りが多い。どケチ。がめつい。声が大きい。うるさい。こわい。豹柄、パンチパーマの人が多い。ゴチャゴチャしている。お笑い。─ そんな「イメージ」に大阪は1960年代から変えられた。大阪にあった本社が東京に移転し、東京一極集中。大阪・近畿は経済的地盤沈下がすすむ。しかし、それって本当なのか?


「好きな壁紙を張って自分の理想の空間をつくる」ことをミッションに、2000年にたちあげた「壁紙屋本舗(?フィル)」は住宅のリノベーションニーズの高まりを捉え、実店舗とオンラインショップで急成長している。世界中から集めた壁紙をつかって、色とりどりの魅力的な空間づくりのお手伝いする、この会社は大阪市の中心より西の大正区、大阪湾の大正内港に本社を構えて、世界一の壁紙会社を目指されている。


TVコマーシャルで有名な資材ネットストアの「モノタロウ」も2000年に大阪で創業した。海外のビジネスモデルに学び、日本流に翻訳・編集して、大阪の卸問屋などのネットワーク・物流の拠点性を考慮して大阪に本拠地を置いた。壁紙屋本舗も、モノタロウも、大阪を経ることで、価値や意味を高める仕組みをつくりあげている。大阪にいる「必然性」を活かし成功している。大阪があかんあかんといっている人は、そのことに気づいていない。


日本中が「東京一極集中が進んでいる」という。東京が全国の事業機会を奪っているという都市間競争構造の理解は誤っている。前回も触れたが、東京で入手できる財やサービスはITやロジスティックの発達によってローカルでも手に入れることができるようになった。いや、ローカルの方が圧倒的に有利となっている。この変化をつかめるかどうかがビジネスの、都市のポシビリティを高める。


現に東京以外の地域で、東京市場をはじめ日本、そして世界市場を相手としたビッグビジネスの多くは2000年以降に立ちあがっている。「北海道」のニトリ、「仙台」のアイリスオーヤマ、「広島」のダイソー、「愛媛」のDCM「山口」のユニクロ、「長崎」のジャパネットたかたなどの独創的な企業がうまれ、大きく成長しつづけている。東京一極集中というが、それは本当か?


世界に目を向けると「首都」に政治・経済・文化の中心拠点が集中しているわけではない。アメリカ(ニューヨーク)、イタリア(ミラノ)、中国(上海、広州)、インド(ムンバイ)、ベトナム(ホーチミン)、ブラジル(サンパウロ)─ と、各都市の経済成長をみれば、明らかである。ITやロジスティックによって、各都市が世界の各都市と直接つながり、共創活動をすすめることができる。


東京圏域(メガロポリス)の社会経済規模は世界五指に入るが、物価の高コスト化によって優れた人材の確保、維持コスト、事業所コストなどで東京での事業経営を圧迫している。東京圏域での地代負担力は地代生産力を上回りつつある。優秀な人材のUターン、Iターンなどの地方回復は、現実的な生業を模索する学生や若手人材によって確実にすすみつつある。地域は、それらの変化の兆しを捉え、点と点をつなぎ、「面」にして、「地域内経済をまわし、循環する仕組み」をつくりあげるという絶好の機会が訪れている。


「大阪はあかん」といっているのは大阪人、「地方は元気がない」といっているのは地方の人。このステレオタイプの言葉を発する「思考停止」が日本社会・産業の課題。日本の社会・経済・文化的活力・機会がすべて東京に奪われているという「東京一極集中」幻想からきている。その土地、その土地がもっていた強み・本質・必然性をその土地のみんなが忘れてしまい、自らのこと、新たなこと、異なることを学ばなくなったことから、「自滅」しているのではないだろうか。


なんとなくあかんのではなく、そもそも真面目に考えていないだけではないだろうか。やるべきことをしていないのではないだろうか。日本は、東京だけではない。東京の強みとともに、それぞれの地域の強みを活かして、東京とともに、地域が多層的な集合体となって結合しあい、融合していくことで、日本全体の力を高めていけるのではないだろうか。現に地方発のすごい会社がどんどんうまれ、世界を相手にしだしている。急がないと間に合わない。


(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  427掲載分

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