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2019年02月04日 by 池永 寛明

【交流篇】 「100人中3人」、どないなってんねん。


講演 がおわったら、“名刺交換”の行列ができる。


“とてもいいお話でした。勉強になりました”“目から鱗が落ちました”“多くの気づきをいただきました”と名刺を交換する。しかしその“感激しました”といって名刺交換した人から、後日メールやSNSで「連絡」がくるのは100人中34人くらい。残る97人とはその後、関係が深まっていかない。名刺交換の瞬間で二人の関係はおわる。名刺をもらってミッション完了、名刺を集めて満足するという「名刺コレクター」がいる。後のアクションをしないから人脈、ネットワークができない。


「どこにアンテナをたてておられるのですか?」

「どのようにして情報を集められるのですか?」「人脈・ネットワークをどのようにつくったらいいですか?」など講義・講演での質問にもよくでくわす。講演の中味・背景を探るというよりも、“答え”“方法論”を知りたがる人が多い。


「とてもおもしろかったです。それはそうと

と、すぐ話題を切り換え、私が話したこととは別の話を滔々と話しだす人がいる。その人が「こうしたい」「これをしたい」「これを考えている」といった目的や問題意識が薄いから、私の話がささらず、「対話」に発展していかない。


しかし話を聴こうと、わざわざ足をはこばれる人はまだいい。

WebサイトやYouTubeSNSで、“情報”はいくらでも集められるから、わざわざ行かなくていいと思う人がいる。そこで語られる内容という「情報コンテンツ」はネットでも仕入れられるが、その現地・現場にいないとわからない空気・文脈・背景・コンテクストがつかめない。だから、ずれる。企業もそう、自治体もそう、大学もそう、現地・現場に行かないようになった。この数年で、一気にそうなった。問題解決力、価値創造力がおとろえているのは、この現場「観察力」の低下も大きい。


ネットで理解したような気になる。

「検索内容」に満足して、判ったつもりになる。その話が「騙り」(もっともらしく巧みに偽る)かもしれないとは考えもしない。与えられた情報、得られた情報を「素直」に、そっくりそのまま受け入れ、その情報を疑ったり、別の視点から見て、確認したり深めたり進化させたりするというプロセスが欠ける。だから、やすやすと間違う、失敗する。


なぜそうなるのか。

「経験」が少ないのだ。試行錯誤をするという自らの実経験がないだけでなく、過去という歴史を学ばず、ケーススタディで「失敗することがなにか」を学ばず、自分と考えのちがう、価値観のちがう人との「対話」が少なく、自分の頭だけで考える。よって情報を受信するプラットフォームが脆弱となり、ひとつの情報から「アナロジー(類比)」できない。「これがこうだとすれば、これはこれと同じ」だとか「あっ、あれね、あれはこれと一緒だ」とか「あるモノと別のモノに似ている。だからあるモノをつくりだすコトが別のモノにもあてはまる」といった「アナロジー」をさがす「引き出し」が少ない。


「こんなこと考えたけど、どうかな?」と事務所に来られる人がいる。

「今、空いてますか?15分、時間頂戴」と確認して、さっと来て、密度濃い対話をして、15分でさっと帰られる。自らの意見、アイデアをスピーディに一所懸命に熱っぽく語られ、こっちも一所懸命に話す。短い時間で対話するから、情報が深化する。


「名刺交換」した日の晩や翌朝にメールをいただいた人との関係は深く長くなりやすい。「人脈・ネットワークが大切だ」という人は多いが、それを実行しない人は多い。今晩も講演だ ─ どれだけの人と名刺交換して、後ほどメールが来るだろうか。


(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  111日掲載分