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2018年07月30日 by 池永 寛明

【耕育篇】 日本さびた・プレゼン下手。

  


ここは図書館ではない。中国深センの書店である。床に、通路に、階段に、店内所狭しと座って、真剣に本を読み耽る子どもたち。本を購入するために、手にとっているのではない。眼光紙背に徹すがごとく、紙面のすべてを理解しようと集中して読む子どもたち。日本で見かけなくなった子どもたちの目の鋭さに、中国の書店で出会った。


「中国では、日系企業のブランドイメージ・待遇はとても良かった。しかしそのトップ企業のなかに入ると、まったくイメージがちがっていた。日系企業はさびていた。」と、深センを案内していただいた中国人通訳の呟き。


中国における日系企業で、中国人が感じること 。「①仕事に対する厳しさがない。日系企業のオフィスで働いている中国人がずっとお喋りしているというような“ゆるさ”がある。それを上司が見て見ぬ振りして注意すらしない。②日系企業では、一所懸命に頑張っても報われない、やってもやらなくても同じという空気が流れている。③日系企業で働き、自己成長できるという見通しがない、モチベーションがあがらない」


「中国のなかで、日本人は群がる。日本駐在員どおしが交際し、現地の中国人と付き合わない。中国にいるのに、中国のことが分からない。これでは、中国にいる意味がない。かつての日系企業はもっとキラキラしていたけど、今の日系企業は中国のことを理解できなくなっている。日本の有名なブランド商品も、軒並み評判を落としている。昔の顔のままで、アップグレードできていない。他国の企業が進歩しているために日本企業の競争力をおとしている要因もあるが、最大の問題は日本企業が中国の現場における変化を感じ、“実相”をつかめていないこと。これでは、中国で受け入れられるわけがない」


「日本のことが、誤解されている ─ 日本は“すごい”と誤解されている」と、シンガポール在住の日本人通訳からもお聴きした。「シンガポールで日本企業のプレゼンに同行するが、日本企業のプレゼンはひどいことが多い。日本人の私ですら、何を言いたいのかさっぱり分からないというプレゼンが多い。“弊社は昭和××年創業で、△△年に…”とおきまりのプレゼン。日本では通用するかもしれないが、外国ではどうだっていいことをボソボソと延々と話をされるので、時間のムダ、退屈でしかない。他国の堂々としたプレゼンに聴きなれているシンガポール人にとって、日本企業のプレゼンはひどすぎる。プレゼンの態度だけでなく、そもそものプレゼンの中味、内容がずれている。当然、日本企業の提案は採用されない」


日本社会で日本人どおしでしか通用しない有識故実のような「世界観」「しきたり」「方法論」では、世界では通用しない。商品で差別化しにくい現代において、ヨーロッパやアメリカ、韓国企業などのような自信をもって本気で押して押して押しまくる力強いプレゼンが世界標準となるなか、日本企業の日本人は真面目な「いい人」で、「おとなしい人」で、なにを考えているのかわからない「宇宙人」に映る。だから「商品」での提案競争の前で、負ける。


なにがちがうのか、どうしてこうなるのか。たとえばシンガポールの幼稚園では、自分の家から“自分の好きなもの”をもっていき、みんなの前で、「これは、なにか?」「このなにがいいのか?」ということを、自ら考えて、自らの言葉で語り、その後でみんなでそのことを話し合い、学び合うという訓練をしている。幼稚園から小学校、中学校、高校、大学と、自ら考え、自らの言葉で語り、他人の話を聴き、語り合い、理解しあい、物事をつくりあげていくことを訓練しつづけている。このようにして「力」をつけて、社会に出る。社会に出て役立つ本当の力を身につけさせるため、国と学校、企業が連携した仕組みを構築している。とりわけ社会人経験をもった企業人OBの参画や、学校の先生もあらたな技術などの学びなおしなどを通じて、こどもに本気に刺さりこみ、国・都市全体でこどもたちを育んでいる。


日本企業のプレゼンが下手だというだけにとどまらない。もっと長く、深い「病巣」がある。どうしたらいいのだろうか


(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  730日掲載分