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2017年03月17日 by 池永 寛明

【場会篇】 玉造黒門越瓜物語2「古代から続く地産地消」

        

 

信州に旅行したら、必ず野沢菜を買って帰る。その野沢菜が江戸時代に大坂の「天王寺蕪(かぶら)」の種から生まれた。そんな素敵な話を、天王寺蕪の会 事務局長の難波りんごさんからお聴きした。

 

考えてみたら当たり前だ。江戸時代の巨大都市の大坂に住む人は必ず食事をとっていた。となると、大規模な農作物が必要となる。江戸に入り、流通インフラ・ネットワーク力(陸上ルート・海上ルート)が構築され、天下の台所である大坂に、全国各地から米・大豆や小豆や野菜など商品作物がもちこまれた。

 しかしながら米本位制である「石高制」で幕藩体制が構成されていたこと、流通システムが普及したというものの現代のような冷蔵機能付きの大量輸送が困難であったため、大坂周縁部や近郊農村で新田・畑が開発され、在来種を含めた生鮮野菜を栽培し、青物市場などの流通を整備し巨大都市大坂の需要に応えていた。人口増加に伴い、農業面積の拡大(室町時代の耕地面積1とすると、江戸中期に3倍に拡大)と、農業技術の開発により農業の生産性(単位面積あたりの収穫量)は飛躍的に向上した。こうして大坂に、農業に加え食品加工を含めた大坂ならではの6次産業が形成されていた。

 

「地産地消」が地域創生の文脈で話題になっている。大阪ガスにて開催した食育セミナーで「身体の腸内細菌に最も適した農作物がある。私たちが生まれ育った地域固有のバクテリアを多く含んだ土地で栽培された農作物を食べることが、心と身体を守るうえで重要である。その地域に生きる私たちの身体は何代も前から先祖代々その地域のバクテリアを含んだ農作物を食べることでDNAを次々とつないでいった」(日本トレーニング指導者協会油谷浩之氏)とお聴きした。だとしたら、大阪も明治大正に入るまで地産地消の農業・食生活が続いており、過去からの大坂・大坂のDNAが繋がれていたはずだった

 

「地産地消」を地域創生、地域で金をまわすビジネスモデルという文脈で捉えるだけでなく、栄養学的に考えると、地域で作った農作物を地域で食べると、人の心と身体にとって大切な地域活動であるといえる。そのなか都市化で大阪から消えた野菜が動き出しつつある。

 

毛馬胡瓜 ②服部越瓜 ③玉造黒門越瓜 ④勝間南瓜 ⑤水茄子 ⑥鳥飼茄子 ⑦田辺大根 ⑧守口大根 ⑨大阪四十日大根 ⑩天王寺蕪 ⑪金時人参 ⑫石川早生 ⑬蓮根 ⑭吹田慈姑 ⑮大阪しろな ⑯独活 ⑰碓井豌豆などが「なにわの伝統野菜」として大阪府・大阪市にて認証され復活しつつある。

 

なにわの地野菜は大坂湾、淀川、大和川、河内湖などにより時間をかけて醸成された豊富な栄養分あふれた、大坂の地で肥沃な土壌にて育てられ、縄文・弥生時代より1000以上も大坂に住む私たちの先祖は食べ続けてきた。しかしながら明治以降の日本の産業革命、交通革命によって遠隔地から多彩な野菜や果物が大量にスピーディに運べるようになった、近代的な都市・産業政策が導入されたことによって、大阪近郊部での農業が減少していった。栄養素、バクテリアを濃厚に含んだ土地で栽培された農作物がなくなり数十年間がすぎた。いや長い歴史から言えば、たった数十年ともいえるべきかもしれない。そして今、なにわの伝統野菜が復活しつつある。

 

(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明、特任研究員 弘本由香里)

 

〔CELフェイスブック 831掲載分

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