大阪ガスネットワーク

エネルギー・文化研究

  • サイトマップ
  • お問い合わせ

CELは、Daigasグループが将来にわたり社会のお役に立つ存在であり続けることができるように研究を続けています。

  • DaigasGroup

JP/EN

Home>コラム

コラム

コラム一覧へ

2024年07月05日 by 前田 章雄

【歴史に学ぶエネルギー】34.お茶目な革命児カダフィ


前回の「歴史に学ぶエネルギー」では、OPECが結成されるにいたる裏の事件をみてきました。しかし、初期のOPECは弱体組織であり、恐れるに足らぬ存在でした。

 

1)リビアを取り巻くアメリカ財閥

中東を中心とした産油国が集結したOPECですが、創立者たちの意気込みにもかかわらず、現実は厳しいものでした。メジャー各社は、OPECの存在を認めることを拒否し続けたのです。設立から7年経っても、OPECはメジャーにとって恐れるに足らぬ存在のままでした。

1967年6月4日、エジプトとヨルダンがイスラエルによって攻撃された、いわゆる六日戦争が勃発します。イスラエルを支持する西側への報復措置として石油ボイコットが提唱され、スエズ運河も閉鎖されました。しかし、OPECの主要メンバーであるイランとベネズエラがボイコットに加わることに拒否したのです。こうして「OPECは連携できない」という事実を、世界にまざまざと見せつけてしまいました。今も続くイランとサウジアラビアの仲たがいは、この時にはじまっています。

このムードを一気にひっくり返し、メジャーを弱体化させる歴史的な革命児が登場します。リビアのムアマー・アル・カダフィです。

 

ここで、リビアの石油事情をみておきましょう。

リビアの石油利権を有していたのは、カリフォルニアからやってきたオクシデンタル(略称、オクシー)という小さな会社でした。社長兼オーナーは、アーマンド・ハンマーという豪腕経営者です。ハンマーはソ連との貿易ビジネスで成功を収めます。彼の石油会社であるオクシーはイランやリビアのとの取り引きをすすめ、セブンシスターズに次ぐ世界第8位の規模にまで成長しました。

余談ですが、ハンマーはロシア系ユダヤ人であり、熱烈なアメリカ共和党支持者でもありました。そのため、アーマンド・ハンマーという名前はアメリカ社会主義労働党の象徴である「腕と金槌(arm and hammer)」からきているとも揶揄されています。ハンマーは美術品コレクターでもあり、ニューヨーク市には彼のハンマー・ギャラリーがあります。ロサンジェルスのハンマー美術館は、のちにビル・ゲイツの所有となっています。

 

リビアでおこなわれたオクシー設立の祝賀会にはイドリス国王も列席し、そこに当時のアルバート・ゴア上院議員も参列しています。彼はのちのアメリカ副大統領ゴアの父(同名)です。

ゴア家の資産がオクシーによって形成され、父にはオクシー副社長のポストが与えられています。息子は『不都合な真実』でノーベル平和賞を受賞していますが、ゴア家の資産が石油由来で形成されていることは皮肉そのものです。

やがて、ハンマー家と同じユダヤ系で石油ビジネスにも通じていたシフ家のサークルにゴア家もはいることになります。シフ家はロスチャイルド系であり、日露戦争で高橋是清に融資したことでも有名です。のちに副大統領ゴアの娘カレンナがシフ家へ嫁ぐことになり、こうしてゴア家はウォール街を支配するアメリカ・ロスチャイルド家財閥の中枢となるのです。

ゴアは副大統領退任後に投資会社の副会長に就任しますが、欧米の石油・金融のトップが政界を巻き込んだ財閥で支配されている構造がよくわかります。

 

2)カダフィの交渉術

リビアのカダフィは、頑固なまでの反欧米を貫き「中東の狂犬」と呼ばれていましたが、一方で親日思想者でした。執務室には、明治天皇の御尊影が飾られていたそうです。

外遊時はホテルに泊まらず、遊牧民テントを持参して野営していました。国連では、持ち時間15分の約束だったにもかかわらず、1時間半も演説しちゃいました。訪米する予定で出発しましたが、お気に入りの美人看護師が入国させてもらえなかったから、自身も取り止めちゃいました。など、お茶目な一面ももっています。

のちに、テロ支援をした疑惑をもたれアメリカから自宅を爆撃されますが、豪邸の横の遊牧民テントで生活をしていたため、難を逃れました。しかし最期は、アメリカが支援する反政府勢力により潜伏先を襲われて死亡します。

 

若き日のカダフィ大佐が率いる青年将校団が、イドリス国王が外遊した隙にクーデターを起こします。これによってリビアの油田もイランのように国有化を主張される、というのが大方の予想でした。

しかしカダフィは、だれよりも現実的でした。たとえ国有化しても困るのはリビアであることを、自身が一番よく知っていました。西側諸国の技術者なしでは、大油田を動かし続けることはできないからです。

今すぐリビアに必要な財源を確保すること。それには、石油の値段を大幅にあげることが近道です。そういった目的においては、カダフィの交渉術はメジャーよりも遥かに上手でした。石油会社全体との交渉は一切さけ、一社ごとの接触に的を絞ったのです。OPECの存在を認めず、各国ごとに交渉をおこなうメジャー独特のやり方が、今度は彼らに対してつかわれたのです。

 

リビアの権益を落札したオクシーですが、カダフィの交渉で一変します。

困り果てたハンマーは、メジャーの首領エクソンに接触します。リビアからカットされた分の石油をエクソンから買い取ることは可能か、協力を要請しました。これに対して、エクソンの会長ケン・ジャミーソンはノーに等しい回答をだしてしまうのです。

ジャミーソンの拒否は、世界中を揺るがす大事件につながりました。ハンマーの要請を断ることで、エクソンは共同戦線を張る機会を自らの手で壊してしまったのです。これが一体どういうことを意味しているのでしょうか。

やがて、火の粉はジャミーソン自身にも降りかかってくることになりました。オクシデンタルの降伏は、ほかの石油会社に連鎖反応を巻き起こします。メジャーたちはつぎつぎとリビアの値上げに従うことになり、そのことがOPECの戦略を大きく変えることにつながっていくのです。

 

 

このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。

 

  • U−CoRo
  • 語りべシアター
  • 都市魅力研究室
  • OMS戯曲賞
Informational Magazine CEL

情報誌CEL

【特集】ウォーカブルの本質を考える

近年、「ウォーカブル」という言葉をよく耳にします。 まちなかを車中心から人中心へ...

バックナンバーを見る
  • 論文・レポート・キーワード検索
  • 書籍・出版
  • 都市魅力研究室
  • FACEBOOK

大阪ガスネットワーク(株)
CEL エネルギー・文化研究所

〒541-0046
大阪市中央区平野町4丁目1番2号

アクセス