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2023年08月23日 by 弘本 由香里

【明日のコミュニティ・デザイン 食・農編】 “ツルつながり”で未来をシェア


こんにちは、エネルギー・文化研究所の弘本由香里です。

私はこれからの地域・社会を支える文化やコミュニティ・デザインのあり方について考え、実践的な研究活動に取り組んでいます。

今回は、その中の一つ、なにわの伝統野菜・玉造黒門越瓜(しろうり) “ツルつなぎ”プロジェクトから、8月6日に開催した、収穫祭・フォーラムで注目した、食・農でつながるサードプレイスの役割や魅力エッセンスをご紹介します。


昨年7月7日付けの同コラム、「人と瓜の遥かな旅路編」(https://note.com/ognwcel/n/n761d61ab3310)で、江戸時代になにわ名物として愛された、玉造黒門越瓜(しろうり)の来歴について簡単にご紹介しました。少しだけおさらいしておきましょう。


1.玉造黒門越瓜(しろうり)でつながる


ユニークな名を持つこのしろうりは、古代中国の越南(えつなん)が原産地とされ、「越瓜」と書いて「しろうり」と読みます。日本に渡ってきた後、時代は下り、江戸時代になると、大坂城の玉造門・通称「黒門」付近の瓜畑で盛んに栽培・加工・販売されたそうです。奈良や伊勢への旅の出入り口の地の利もあって、玉造黒門越瓜は、なにわ土産の番付にも登場するほどに人気を集めました。しかし、近代になると都市化の波とともに玉造の地からしろうりの姿は消え、すっかり忘れ去られていたのです。やがて時は2000年代に、約100年の時を経て、ご当地でこのしろうりの復活を果たされたのが玉造稲荷神社さんです。


その歴史の延長線上で、エネルギー・文化研究所では、地域資源を活かし、人と人のゆるやかなつながりづくりを目的とした実践研究の一環として、2008年から玉造黒門越瓜“ツルつなぎ”プロジェクトを行っています。毎年、玉造稲荷神社さんから同社の瓜畑で採種される玉造黒門越瓜の貴重な種をご提供いただいて、同プロジェクトの参加者が、個々の庭やベランダや畑でしろうりを育て、栽培やお料理の楽しみや、地域・社会への関心を分かち合う取り組みです。


同プロジェクトを継続的に運営している中で、近年、実感していることの一つに、身近な地域の中で育まれている、もう一つの居場所・ゆるやかな支え合いの場づくり、サードプレイスとしてのコミュニティ農園・菜園の広がりがあります。そこで、今年の収穫祭・フォーラムでは、そうした場の担い手の方々にお集まりいただいて、活動の様子や込められた想いを持ち寄って、ご参加のみなさまとともに語り合う機会としました。


 2023年玉造黒門越瓜“ツルつなぎ”収穫祭・フォーラムのチラシ

 

 

2.“ツルつながり”で6つの場・取り組みを紹介


「しろうり、そして食・農でつながるサードプレイス」と題した、収穫祭・フォーラムのリレートークでは、次の6つの場の取り組みをご紹介いただきました。


・「シェア型菜園活動 もりの休日(大阪市中央区、もりのみやキューズモールbase)」について、東邦レオ株式会社の小笠原豊さんから


・「はたけもりHATA Lab×COME Lab(大阪市生野区)」について、同管理人の渡邊よしえさんから


・「松野農園(大阪市生野区)」について、NPO法人出発(たびだち)のなかまの会の吉岡徹さんから


KuseFarm西宮市)」について、有限会社Kusemaru-farmの久世竜さんから


・「奈良・浅井農園(奈良県川西町)」について、同農園の谷口悦子さんから


・「中野ガーデン(阪南市、箱作の菜園)」について、同オーナーの中野好一さんから

 

それぞれが拠点としている地域や環境特性は異なっています。都心部もあれば、都心の縁辺部もあれば、都市の郊外や旧農村部もあります。出発点となっている動機も様々です。


「シェア型菜園活動 もりの休日」は、都心部での子育て世帯を中心にした新たなコミュニティづくりが志向され、「はたけもり HATA Lab×COME Lab」や「松野農園」では、高齢化が進む住宅市街地で空き家・空き地を活かし、まちを再生するコミュニティスペースの可能性が開かれています。「KuseFarm」や「奈良・浅井農園」では、これからの社会のために都市郊外で守られてきた農の環境を活かすチャレンジが始まっています。「中野ガーデン」では、美しいロケーションが多彩な人材を引き寄せ豊かな交流の場となっています。


バックグラウンドや問題意識の出発点やフィールドの環境や規模は異なっていても、共通しているのは、いずれも人とのつながりを重視し、旬の収穫物を調理して食することや、野菜や穀物を育てる経験の共有を大切にした場づくりが行われていることです。その一角に、玉造黒門越瓜(しろうり)も加えていただくことで、また新たな出会いが生まれ広がっています。

2023年玉造黒門越瓜ツルつなぎ収穫祭・フォーラムの様子(86日、NEXT21ホールにて開催)

  

3.新たなおすそ分け文化の種を蒔き育てる


食や農の営みは、食料の消費と生産だけに終始するものではないはずです。しかし、私たちは狭義の経済活動としての消費と生産だけに捕らわれて、その周辺にある本来人が生きていくために欠かせない要素を過小評価してきたのかもしれません。


単純にお金に換算できない価値の最たるものが、食・農を介した人とのつながりです。さらにその最たるものが、いわゆる「おすそ分け」と言われる日常の生活文化でしょう。出来過ぎた作物を配って食べてもらう、収穫物でつくったお料理やお菓子をともに味わう、なんでもないようなことですが、ゆるやかな人間関係が生まれることによって、コミュニケーションの機会や、目に見えないセーフティネットの糸が増え、安心・安全の心理も無意識のうちに向上し、ウェルビーイングにつながっていきます。


もちろん、「おすそ分け」だけでは、生業としての農の営みは維持できませんので、「おすそ分け」文化と並行して、生業としての農の営みを支える仕組みも不可欠です。その際にも、消費と生産の閉じた輪の中に回収されてしまうのではなく、その輪を開いていく取り組みがいかに重要であるかを、収穫祭・フォーラムで紹介された事例は如実に物語っていると思うのです。閉じていいた農の世界に、食料生産の場としての役割だけでなく、学びや交流のプログラム、キャリア支援のプログラム等、新たな役割を導入していくことによって、未来の種が蒔かれ育まれていくのだと実感しています。

 

※玉造黒門越瓜(しろうり)“ツルつなぎ”プロジェクトの、しろうりライフの様子はインスタグラム「みんなの瓜畑」 https://instagram.com/min_uri_since2020 でご覧いただけます。












 


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