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2023年06月14日 by 遠座 俊明

モチベーション、こころの姿勢が奇跡を起こす!? 〜人生100年を生き抜くために大切なこと〜

こんにちは。エネルギー・文化研究所研究員の遠座(おんざ)俊明です。

私は「活力ある高齢社会づくり」「定年後の生き方」を研究してきましたが、今月で65歳になり、エネルギー・文化研究所を退職するため、研究員としてこれが最後の投稿になります。そこで、今までの常識や考え方が変わり、特に感じている自分を活かしていくうえで重要なポイントについてお話します。


1.NPOや調査研究活動の中で見えてきた“奇跡”


私は高齢社会に関する研究のかたわら、それを実践活動に結び付けるべく2021年春に「NPO法人健康・生きがい就労ラボ」を立ち上げました。このNPO法人は、高齢期にありがちな生活不活発化によるフレイル(虚弱化)を防ぎ、介護予防に役立つ高齢者の活動支援を目的にした団体です。「高齢者が活動することで元気・健康が維持できる」をコンセプトにしており、その高齢者の活動する気持ちを維持するための工夫として年をとっても無理ない範囲で働き、小遣い程度ですが収入も得る“健康・生きがい就労トライアル”の仕組みを自治体や福祉系の事業者(雇用主)と一緒に創っています。

また、最近の急激なデジタル化に高齢者が少しでもついていけるようにスマホ講座も独自の視点で行っています。

さて、そこで見えてきたことは、


80代でも働ける!

・認知症の介護施設利用者でも働ける!

90代でもスマホをある程度使えるようになる!


と、今までの自分がもっていた常識が実は自分の思い込みに過ぎなかったということです。


健康・生きがい就労トライアルには、60代、70代に交じって80歳くらいの方も元気に参加されています。そして3ヵ月トライアルの終了後もパートとして、継続して働いていらっしゃる方々がいて、「自分は介護施設に入ってもおかしくない年齢ですが、働く機会ができてありがたい。これからも人との触れ合いを大切にしていきたいです」と感想を寄せられています。

介護施設で認知症の症状がある方々がその施設の家事を手伝ったり、まな板づくりなどの軽作業を行ってお小遣いを手にされていらっしゃいます。

また、私たちのスマホ講座には80代後半〜90歳前後の方も来られますが、92歳のある女性はLINE操作を覚え、トークで友達とやりとりを始められました。

 

2.高齢になってもスマホを教える側にまわれる


私たちNPOが運営する高齢者向けスマホ講座には、さまざまなスマホを持った受講者が参加されます。スマホはOS別にi-PhoneAndroidとに分類されますが、Androidスマホは国内だけでも20を超えるメーカーによる違った仕様のものが流通しており、更にシンプルスマホ、かんたんスマホと呼ばれるものを含めると受講者は多種多様なスマホをお持ちです。そして皆さんそれぞれ違った困りごと、興味・関心をもって参加されます。これらのニーズに対応するためには受講者数名に1人のチューター(サポーター)が講座の時間中、常について、受講者の個々のニーズに対応していく必要があります。そのために私たちは高齢者の悩みがわかり共感できる同じ年齢層の講師、チューターが教えることにしています。20名の講座を運営するのに510人の高齢者チューターが必要なのでその方々を養成し、現在60代〜70代の30名がスマホを教えられるようになっています。通常のスマホ講座を受けられた方にチューター養成講座にも参加していただき、特にスマホが得意ではなかった普通の高齢者がスマホ操作の面白さに気づき、楽しく学び、サポート実習を積んで、今度は教える側にまわって活躍されています。もちろん受講者のすべての質問に答えることはなかなか難しいのですが、わからないことは講師や他のチューターに聞いたり、一緒に考えたりしながら、場数を踏んでいくことでチューターとしての技量が上がっています。


3.能力(潜在的能力の発揮)はこころの態度が支配的


昨年ベストセラーになった高齢者専門の精神科医である和田秀樹氏の著書「80歳の壁」によると、人の脳は、無数の細胞がネットワークを構築し働いていて、使っていないネットワークは消失しますが、繰り返し行動すれば何歳になっても新たなネットワークを新設できるそうです。つまり、新たな能力も獲得できるのです。「記憶力が落ちた」と自己暗示をかけると、若い人でも記憶力は落ちる。つまり記憶力は「年を取ったから」ではなく「覚える気がない」から落ちていく。「記憶しよう」という意欲がなくなるから、記憶できなくなる。つまり「年を取ると記憶力が落ちる」と決めつけるのは間違いだそうです。

これと同様のことが、別の研究者の実験でも示されています。24個の単語を眺め、その記憶力を若者のグループと高齢者のグループに試したところ、「心理テスト」として説明した場合は、2つのグループのスコアは変わらなかったが、「暗記テスト」と説明したとたんに高齢者のグループのスコアがかなり下がったそうです。

 


 

いまでは、能力(の発揮)というのは年齢よりもマインドセット(心のもちよう、態度)が支配的であるということが学会の定説になっています。 


4.生きる目標をもつことは脳にもよい効果


マインドセットの中で、特に生きる目標をもつことが認知機能にも非常によい効果があるとの研究があります。米国ラッシュ大学で、約250人の高齢者を対象に10年にわたって行った認知機能調査と人生目標の有無などをヒアリングし、その人たちが亡くなった後に脳の解剖を行う大規模な調査結果です。

生前「生きる目標をもっていた高齢者のグループ」と「生きる目標をもっていなかった高齢者のグループ」で死後解剖して脳のアルツハイマー型病理の状況を比較したところ、同じように脳の病理が進んでいても「生きる目標をもっていた高齢者のグループ」の方は生前の認知機能の得点が明らかに高かった(傍から見るとあまり認知症が進んでいるようには見えなかった)というものです。生きる目標をもつことで、脳の残存機能が活発に働き、病理の発現をカバーしていたと考えられています。

 

5.自前の目標に向かう活動を通じてわかってきたこと


私は、会社の仕事とNPOの仕事(活動)のダブルワークで、土日、盆も正月もないような状態が2年以上続いています。これまでの人生の中でも最も忙しいのでは?などと思うくらいですが、自分の中から湧いてくる自分のめざす目標に向かって活動を行っているという気持ちからか、疲労感を感じることが少ないのが不思議です。仕事をしていると様々な課題・問題にもぶつかりますが、自分で決めた目的・自前の目標の達成にいたる道程と思えれば大きなストレスを感じることもなく乗り越えられます。

現役時代は、会社や世間体という外からの評価に依存し、目の前の仕事を片付けること、目の前の課題を解決することで良しとし、極論すると他のことはほとんど考えずに過ごしていました。日々がその繰り返しで、その日常にどっぷり浸かっていました。しかし50代中ごろから行動し続けたことで、一皮むけてきたというか、心の様相が変わり、今では「60歳からが人生」という言葉にも、なるほどと納得しています。“自分の内から出てくる”モチベーションの重要性を強く感じています。

活動することで新たな経験・知見も蓄積され、世界がどんどん広がっています。そして、次のステップへとワクワクしています。



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