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2023年04月20日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話27 【エネルギーの利用】 ガラスの製造は、ちょっと特殊!?

【エネルギーの利用】 ガラスの製造は、ちょっと特殊!?


 

 

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

エネルギー多消費産業でもあるガラスの製造。観光地によくある吹き矢で丸く形づくるイメージはありますが、大量生産の現場ではどのようにしているのか、見てみましょう。

 

 

1.ガラスを溶かす大型炉は、停まることがない!?

 

ガラスの主成分は珪砂です。つまり、砂。砂を溶かして、そこにさまざまな成分を加え、冷やすと透明になります。砂を溶かすためには、1,600℃というとんでもなく高い温度が必要になります。

 

ビンやコップなどをつくるガラスの工房では、るつぼの中で溶かしたガラスを吹き矢の先につけ、棒の反対側から息を吹き込みながら丸い形をつくっていきます。職人さんが、とても暑い環境下で作業をされています。

ところで、ガラスを溶かし入れている“るつぼ”のことを「ねこ壺」と呼んでいます。

 

出典)三田市ガラス工芸館

 

加熱炉の前板を開けてみると、猫がちょこんと座った丸い形のるつぼが現れます。ただし、首を切り落とした状態です。可愛いのか残酷なのか微妙な感じですが()、このような形状をした「ねこ壺」の中でガラスが溶かされています。

もちろん、ガラスを溶解している時は、ねこ壺の周りは高温の炎が渦巻いています。

 

一方で、ガラス板などを大量につくる工場では、どのような設備でガラスを溶かしているのでしょうか?

それは、タンク窯と呼ばれる巨大な加熱室でガラスを溶かしています。下には溶けたガラスが溜まっており、溶けたガラスの上の空間ではバーナの巨大な炎が渦巻いています。

加熱室の大きさは、大きいタンク窯では小学校の教室より広く、その数倍程度の面積があるとお考え下さい。それだけの広さを1,600℃に保っているわけですから、燃料を大量に消費する設備となっています。

 


  ガラスを溶解する加熱室は左の茶色い部分 出典)日本板硝子

 

ちなみに、タンク窯は24時間356日ずっとバーナの火を止めることはありません。温度が下がってガラスが固まると、もう二度と溶かすことができなくなるからです。

バーナの火が止まるということは、設備が壊れるということ。つまりは工場が長期間、完全に停止することを意味しますので、工場が操業している限り、加熱室の燃焼を停めることは絶対にありません。

 

 

2.ガラスを溶かすには、黄色く輝く炎が必要

 

じつはガラスを溶かすには、特殊な炎が必要なんです。写真のように黄色く輝いている炎でなければ、ガラスを溶かすことができないんです。

こうした眩い炎を「輝炎」と呼び、おもに重油を燃やした時に形成されます。つまり、ガラスの溶解は重油燃焼が主流となっています。

 

 輝炎と青い炎  出典)大阪ガス

 

ここで、天然ガスを原料とする都市ガスの炎を考えてみたいと思います。

家庭用のコンロに火をつけると、青い炎が燃えあがります。天然ガスの主成分はメタンCH4といって、炭素成分Cが少ないのが特徴です。

一方で、重油は炭素成分を多く含んでいます。その炭素が直接燃える時の黄色い炎は放射がよく効くため、ガラスを溶かすことができるのです。

逆に言えば、天然ガスの青い炎ではガラスがちゃんと溶けてくれない、ということです。

 

ちなみに、上の黄色い輝炎の写真は、じつは天然ガスを燃やした時のものです。これには、ある特殊な技術がつかわれています。

天然ガスを二段階で燃やします。はじめに、空気が足りない状態で炭素の未燃分をわざと出させます。炭素の未燃分とは、微細な煤だと思ってください。そこに二次燃焼として空気を投入し、煤を燃やすことで黄色い輝炎を出させています。

二段階燃焼だけであれば比較的容易にできるのですが、最終的に未燃分を完全燃焼させなければならない(一酸化炭素を絶対に出してはいけない)ため、そこが技術屋の腕の見せどころとなっています。

 

問題はここからです。

重油燃焼は二酸化炭素の排出量が多いため、燃料を環境に優しい天然ガスに変えたいと考えました。輝炎を出すガスバーナも開発しました。

しかし、だからといって今までの重油燃焼と同じようにガラスが溶けてくれるとは限りません。既存の炉の形状とガスバーナの炎の形状とのマッチング次第では、ガラスの溶け方が変わってしまい、製品の品質が低下したり、経済性が悪化したりすることだってありえます。

 

そこで、何本かあるうちの一部のバーナだけをテスト的に変えてみて、炉内の温度分布の傾向を見ます。もちろん、溶解を絶対に止めてはいけないので、ほかのバーナを燃やしながらの灼熱の環境下でのバーナ交換です。

そして、新たなガスバーナで温度データが少しでも変われば、すぐに元の重油バーナに戻し、つぎのノズル形状のガスバーナを製作する。それを再度取りつけてテストをし、ダメならもう一度繰り返す。そして、ようやく納得できたガスバーナでロングランテストをおこないますが、これも一発でうまくいくとは限りません。

このようなテストを実施したのちに、ようやく次のバーナテストに移ります。

 

ガラスだけではありませんが、生産工場では製品の品質を確保することがすべてに優先されます。そして、製品品質を確保したうえで、経済性やほかのさまざまな条件も同時にクリアにしていかなければなりません。

低炭素や脱炭素にむけて、高いハードルを解決できるように一歩ずつ鋭意努力をしている。というのが、ガラスをはじめとした産業界がおかれている現状なんですね。

 

 

このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。



 


 

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