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2022年11月02日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話16 水素の利活用について、深堀してみよう!

水素の利活用について、深堀してみよう!


 

 

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

ものごとにはなんでも、メリットとデメリットがあったり、向き不向きがあったりします。クリーンエネルギーとして燃やしても水しか発生しない水素ですが、この水素も万能というわけでは決してありません。

その水素がもつ性質から、水素の利活用について掘り下げてみたいと思います。

 

 

1.水素には、どんな性質があるの?

 

水素原子Hは、世の中でもっとも小さい元素です。言い換えれば、気体の水素H2は世の中でもっとも小さく軽い物質です。

分子がほかのどの物質よりも小さいということは、漏洩には細心の注意を払う必要があります。

一方で、万一漏洩が生じても軽いため拡散しやすく、滞留の危険性が小さいとも言えます。

このように、メリットとデメリットが裏腹な関係になっていることは、よくあります。

 

また、水素には炭素Cが存在していないため、燃やしても二酸化炭素CO2が発生することはありません。水H2Oしか生成しないクリーンなエネルギーです。

一方で、発熱量の大きな炭素成分が含まれていないため、燃やした際の発熱量はとても小さい。天然ガスの主成分であるメタンCH4の発熱量の3分の1程度しかありません。「薄い」と表現しても良いかもしれません。

しかし、水素の発熱量が小さいからといって、加熱する能力まで小さくなるという意味ではありません。バーナのノズル面積を大きくして、天然ガスの3倍の量を噴出させるようにしてやれば、水素でも天然ガスと同じ燃焼量を確保することができます。

ところが、既存の天然ガスの配管を流用して水素に単純転換したとすれば、配管径はそのままなので、加熱能力は3分の1に低下してしまいます。

 

水素のほかの性質として、燃焼速度が速いことも挙げられます。これは、燃えやすいことを意味しますので、着火不良や保炎のことをあまり考えなくとも燃えてくれます。

一方で、燃焼速度が速いということは、ノズルの焼損を考慮しなければなりません。ノズルからガスが噴出したのちに燃えて炎を形成しますが、水素は今までよりもノズル出口の近傍で燃えるため、ノズルが赤熱して焼損しやすくなるという悪い面も出てきます。

そのため、水素専用のバーナを新規に開発する必要があります。

 

まとめると、水素には

「軽い(分子が小さい)」

「薄い(発熱量が小さい)」

「よく燃える(燃焼速度が速い)」

という性質があり、それぞれにメリットとデメリットが生じます

 

このように、水素は例えば天然ガスとは性質が異なるため、天然ガスから水素に転換したとすれば、さまざまな物理現象としての違いが生じてきます。物理現象の相違そのものは、技術開発やイノベーションといった科学の力でなくすことはできません。

違いを理解して想定し、その対応策をあらかじめ考えて転換に臨むことが必要になります。

 

 

2.水素の最大の欠点とは、なに?

東京オリンピックの開会式。テニスの大坂なおみ選手が聖火台に火を灯すと、オレンジ色の眩い炎が燃え上がりました。とても印象的な光景でした。

 

この東京オリンピックの聖火には、燃料として水素が採用されていました。

でも、水素の炎って、本当は目に見えにくいんです。背景を黒くして目を凝らして見なければ火がついているか分かりにくいほど、炎の色が薄いという特徴があります。

 

 

 

では、なぜ聖火の炎が眩いオレンジ色だったのかといえば、水素に金属の粉を混ぜて、炎色反応で着色していたからなんですね。

 

炎が見えにくい。これは、水素の最大の欠点と言えるのかもしれません。

では、「炎が見えにくい」ことはどのような設備に不向きなのか、考えてみたいと思います。

 

大型の燃焼設備には、炎が正常に燃えているかどうかを検知する安全システムが採用されています。しかし、安全指標上でも、炎検知をしなくてよい設備もあります。解放空間で燃焼しており、かつ常時、人が炎を監視する作業の場合です。

具体的には、家庭用の一口コンロでは、鍋料理をしている際に万一、火が吹き消えても、すぐに消すことができるという理由から、過去の設備には炎監視装置がつけられていません。

料理屋さんの鋳物コンロや鉄板焼きのバーナなども、これに相当しています。

 

このような設備は、不特定多数の人々が使用されており、さまざまなメーカー品が存在しています。そのため、どの設備がこれに該当するか完全に把握することが難しいのが実態となっています。

もしかすると、日常は押入れの奥にしまわれていて、たまに利用されるケースだってあるかもしれません。

 

もちろん、こうした設備を水素でつかっては絶対にダメ、と決めつけているわけではありません。しかし、安全にかかわる問題ですから、事前に周到な検討をしておいたほうが良いでしょう。

水素を利用する設備は全数、炎監視する安全装置を義務付けるという強制的な対策もあります。しかし、食品関係の事業所では、衛生上の理由から水をかけて掃除をする作業がありますし、今おつかいの設備を(押入れの奥にしまわれているものも含めて)安全装置付きの設備にすべて新しく交換してもらうのも現実的ではありません。

 

クリーンで良いことばかりに見える水素ですが、水素のもつ物理的な性質が実際の設備でどのように影響するのか、どうやって課題をクリアにしていくのか、もっともっと考えていく必要がありますね。

 

 

このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。


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